海外の相手との知的財産・秘密保持・個人データ:成果物・営業秘密・技術導入・国外提供

海外の委託先との間を行き来するのは、作らせた成果物、見せる秘密、預ける個人データの三種類です。権利は国ごとに定まり、秘密は国境を越えて流出し、個人データの移転には追加の手続が要るため、契約書の条項で受け止めます。

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著作権を譲渡すると書いただけでは、成果物を改変して新しい作品を作る権利が含まれていないと推定される場合があります(著作権法61条2項)。

このページの要点

  • 権利は国ごとに成立し保護されるのが原則。成果物は譲渡か許諾かを分け、27条・28条の権利と著作者人格権の不行使、地域・目的・期間を書く。
  • 秘密として管理されていることが営業秘密の要件(不正競争防止法2条6項)。国外への移転の制限、アクセスする者の限定、返還・廃棄を書く。
  • 外国の相手から技術を導入する契約には、事前の届出(外為法30条)または報告(同法55条の6)が必要な場合があり、届出では30日の待機期間がある。
  • 個人データを外国にある第三者に提供する場合は個人情報保護法28条の規律がある。取り扱う国、安全管理、再委託、漏えい時の通知、消去を契約書に書く。

結論:海外の相手に渡すものは三種類。作らせたもの(成果物)、見せるもの(秘密)、預けるもの(個人データ)

海外の委託先に製造や制作や開発を頼む取引では、契約の中心である商品や代金のほかに、三種類のものが相手との間を行き来します。一つ目は、相手が作る成果物です。設計、デザイン、ソフトウェア、文章、図面、試作品など、相手が作ったものについて、権利が誰のものになるのかが問題になります。二つ目は、こちらから相手に見せる情報です。製造の方法、顧客の情報、価格の構成、未公開の計画など、渡した情報が相手のもとから外に出ていかないかが問題になります。三つ目は、顧客や従業員の情報のような個人データです。委託先が外国にある場合、日本の法令が個人データを外国にある第三者に提供する場合について特別の規律を置いているため、契約書の書き方に影響します。

国内の取引なら、権利は日本の法令で一貫して考えればよく、秘密も日本の不正競争防止法で考えればよいので、契約書の条項は短くて済みます。海外の相手との取引では、権利の成立や保護が国ごとに定まる、秘密が国境を越えて流出する、個人データの移転に追加の手続が要る、という違いがあり、その違いを契約書の条項で受け止めておく必要があります。このページでは、三種類のものについて、契約書に書くべき項目と、その背景にある日本の条文を整理します。権利の出願や登録、各国の個別の法令の内容は、このガイドの対象外です。技術の提供そのものに許可が要る場合は輸出入規制のページで、委託製造や開発委託といった取引の型ごとの契約の骨格は取引の型のページで整理しています。

  • 権利は、国ごとに成立し、国ごとに保護の範囲が定まるのが原則。日本で権利を取得したことが、外国での権利を意味するわけではない。
  • 成果物は、権利を「譲渡」するのか、「利用を許諾」するのかを分けて書く。譲渡なら、著作権法61条2項(翻案権等の特掲)や、著作者人格権の不行使の定めを意識する。
  • 秘密を渡すときは、不正競争防止法の営業秘密に当たる管理を行ったうえで、再提供の禁止、返還・廃棄、外国での使用の禁止を書く。
  • 外国の相手から技術を導入する契約には、外為法30条の届出、または55条の6の報告が必要になる場合がある。
  • 個人データを外国にある第三者に提供する場合は、個人情報保護法28条の規律がある。契約書には、目的、範囲、安全管理、再委託、返還・消去を書く。

権利は国ごとに成立する:国内の権利と同じとは限らない

知的財産に関する権利は、一般に、各国の法令に基づいて、その国の領域で成立し、その国の領域で保護されます。たとえば、日本の著作権法は、保護を受ける著作物を次のとおり定めています(同法6条)。日本国民(日本の法令に基づいて設立された法人および国内に主たる事務所を有する法人を含む)の著作物。最初に国内において発行された著作物。そのほか、条約により日本が保護の義務を負う著作物。この規定が示すように、日本の法令で保護される著作物かどうかは、日本の法令と、日本が加入する条約の枠組みで決まります。外国の法令では、同じ著作物の保護の範囲や期間が異なることがあります。

この前提は、海外の取引の契約書に、二つの影響を与えます。第一に、日本の側が成果物の権利を取得するという契約を結んでも、その権利が、相手の国や第三国でも同じ内容で認められるとは限りません。契約書で権利の帰属を定めた場合、その契約の効力は契約の準拠法によって決まりますが、権利そのものの成立と保護は、権利が主張される国の法令によります。第二に、日本の側が成果物を日本国内でだけ使う予定でも、相手が他の国で同じ成果物を使い、他の顧客に提供する可能性があるため、利用の範囲を契約書で限定しておく必要があります。

なお、権利が国ごとに定まるという整理は、一般的な説明です。具体的な国での権利の成立、保護の範囲、権利の取得の手続は、その国の法令と条約によります。外国法の内容は、このガイドでは判断しません。

成果物の帰属と利用許諾:譲渡と許諾を分け、範囲を書く

海外の委託先が作った成果物について、契約書に何も書かなければ、権利は、原則として、作った側に残ります。日本の著作権法を例にとれば、著作権は、著作物を創作した人(著作者)に生じます。依頼を受けて作ったから、依頼した側の権利になる、という仕組みではありません。依頼した側が成果物の権利を得たいなら、契約書で、権利を譲り受けるか、利用の許諾を受けるかを、はっきり書く必要があります。

成果物の扱いの二つの型

権利を譲り受ける(譲渡)

成果物の権利が、依頼した側に移る

  • 依頼した側が、成果物を自由に使い、改変し、他に利用させることができる。
  • 相手が同じ成果物を他の顧客に提供することはできなくなる。
  • 対価は、譲渡の範囲に応じて高くなる傾向がある。

利用の許諾を受ける(ライセンス)

権利は相手に残り、使える範囲が決まる

  • 使える目的、期間、地域、方法を契約書で決める。
  • 相手が他の顧客にも提供できる。
  • 対価は低くなる傾向があるが、許諾の範囲を超える使用は契約違反になる。

どちらを選ぶかは、成果物の性質(自社の事業の中核か、汎用のものか)と、対価の水準で決まります。譲渡と許諾の中間の形(独占的な許諾など)もあります。

日本の著作権法は、著作権の全部または一部を譲渡できると定めています(同法61条1項)。そのうえで、著作権を譲渡する契約において、同法27条または28条に規定する権利(翻案権など、二次的著作物に関する権利)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています(同法61条2項)。つまり、「著作権を譲渡する」とだけ書いてあっても、成果物を改変して新しい作品を作る権利が、依頼した側に移っていない、と推定される可能性があります。契約書では、これらの権利も含めて譲渡する旨を、明示的に書いておく必要があります。

また、著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができません(同法59条)。成果物を依頼した側が自由に改変して使うには、相手が著作者人格権を行使しない旨の定め(不行使の特約)を置くのが一般的です。これらは日本の著作権法の規定ですが、成果物の権利がどの国の法に従って判断されるかによって、扱いは変わりえます。相手の国の法が、権利の譲渡や人格権の扱いについて、日本とは違う規律を置いているかもしれません。

書き方の例(一般的な例) 成果物の権利の条項

帰属

よくある書き方成果物の著作権は、甲に帰属する。
整えた書き方成果物に関する著作権(著作権法27条および28条に規定する権利を含む。)その他の知的財産権は、成果物の検収が完了し、甲が代金の全額を支払った時に、乙から甲に移転する。乙は、著作者人格権を行使しない。

理由27条・28条の権利を含めると明示する。移転の時期を代金の支払と結びつけると、売り手(受託者)にも買い手(委託者)にも分かりやすい。人格権の不行使も書く。

既存の権利

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方乙が、本契約の締結前から保有していた権利、または本契約と無関係に開発した権利は、乙に留保される。乙は、成果物にこれらを組み込んだときは、甲に対し、成果物の利用に必要な範囲で、非独占的に利用を許諾する。

理由委託先が持っている既存の技術や素材は、成果物に混ざりこむ。その部分の権利は相手に残し、成果物を使うために必要な許諾を受ける形が現実的。

範囲

よくある書き方成果物を自由に使用できる。
整えた書き方甲は、成果物を、地域の限定なく、目的の限定なく、期間の限定なく、使用し、複製し、翻案し、頒布し、第三者に利用させることができる。

理由許諾にとどめる場合は、地域、目的、期間、サブライセンスの可否を一つずつ書く。権利が国ごとに定まるため、地域の指定が特に重要。

保証

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方乙は、成果物が第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する。第三者から権利侵害の主張がなされたときは、乙は、自己の費用でこれに対応し、甲に生じた損害を賠償する。

理由委託先の作った成果物が、他者の権利を侵害していた場合の責任の所在を決める。責任の上限を置くかも検討する。

成果物の権利が、相手の下請や従業員、フリーランスの協力者が作ったものを含むこともあります。この場合、相手が、そうした人たちから権利を取得しているかどうかが問題です。契約書に、成果物の権利が相手に適切に帰属していること、およびその再委託先から権利を取得していることを保証させる条項を置くことが、一般的な備えです。権利の連鎖が切れていると、依頼した側が権利を譲り受けても、その権利に穴があることになります。

秘密保持と営業秘密:外国の相手に見せるときの追加の論点

秘密保持の条項そのものの一般的な書き方は、別のガイドで扱っています。ここでは、海外の相手に秘密を渡すときに加わる論点に絞ります。

日本の不正競争防止法は、「営業秘密」を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものと定義しています(同法2条6項)。営業秘密を窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段で取得する行為や、それを使用・開示する行為、また、営業秘密を示された者が、不正の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的で使用・開示する行為は、不正競争に当たります(同法2条1項4号から9号まで)。ここで重要なのは、「秘密として管理されている」ことが定義の要件に入っている点です。相手に見せる情報について、実際に秘密として管理していなければ、法的な保護が受けにくくなります。

海外の相手に渡す情報は、相手のもとで、日本の側の管理が及ばなくなります。契約書で、相手が情報を秘密として管理する義務を負うことを明示し、その管理の方法を具体的に定めることが、「秘密として管理されている」といえる状態を保つ助けになります。

確認の問いと理由秘密を渡す前の問い

  1. 渡す情報は、特定できる形になっているか。

    「秘密情報」を広く定義するだけでなく、特に重要な情報(図面、レシピ、顧客リスト)は、種類と範囲を特定しておく。

  2. 相手のもとで、誰がアクセスできるか。

    相手の従業員、再委託先、協力者の範囲を限定する。アクセスできる人に、秘密保持の義務を負わせる。

  3. 相手が、情報を第三国で使う可能性はないか。

    契約書で、使用する国と目的を限定する。第三国への持ち出しや再提供を禁止する。

  4. 契約が終了したとき、情報はどうなるか。

    返還または廃棄の義務、廃棄の証明の方法を書く。電子データは、バックアップも含めて消去する旨を書く。

営業秘密が国外で不正に使用・開示された場合について、不正競争防止法は、一定の場合に国外での行為にも罰則の適用を及ぼしています。たとえば、日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外において営業秘密の不正な取得・使用・開示の罪を犯した者にも適用すると定められています(同法21条8項)。また、日本国外において使用する目的で営業秘密を不正に取得した場合などは、より重い刑が定められています(同条4項1号から3号まで。10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金)。ただし、これらの規定があるからといって、外国にいる相手に対して、実際に日本の法令に基づく手続をとれるとは限りません。外国での執行は執行のページで整理した制約を受けます。契約書の段階で、秘密の管理を徹底しておく意味はここにあります。

条項例秘密情報の取扱い(海外の相手との契約の追加の例)

  1. 受領者は、秘密情報を、本契約の目的のためにのみ使用し、開示者の事前の書面による同意なく、第三者に開示、提供または漏えいしてはならない。
  2. 受領者は、秘密情報を、日本国外の施設およびサーバーに移転する場合には、開示者の事前の書面による同意を得なければならない。
  3. 受領者は、秘密情報にアクセスできる者を、本契約の履行に必要な範囲の自己の役員および従業員に限り、これらの者に、本契約と同等以上の秘密保持の義務を負わせる。
  4. 本契約が終了したとき、または開示者から求められたときは、受領者は、秘密情報およびその複製物を、直ちに開示者に返還し、または廃棄し、廃棄したことを書面で証明する。

期間、例外(公知の情報など)、強制開示への対応は、秘密保持の一般的な条項として別に書きます。ここでは、国外への移転の制限など、海外の相手に特有の項目に絞っています。

技術導入契約の届出・報告:外国から技術を導入するとき

海外の相手から、技術の使用許諾を受けたり、技術の指導を受けたりする契約には、外為法の届出または報告が必要な場合があります。外為法30条は、居住者が、非居住者との間で、その非居住者の行う工業所有権その他の技術に関する権利の譲渡、これらに関する使用権の設定、または事業の経営に関する技術の指導に係る契約の締結や更新、契約の条項の変更(技術導入契約の締結等)をしようとするときは、そのうち、審査が必要となる技術導入契約の締結等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものについて、あらかじめ、契約の条項その他の政令で定める事項を財務大臣と事業所管大臣に届け出なければならないと定めています(同条1項)。

届出をした居住者は、届出の受理の日から30日を経過する日までは、その契約の締結等をしてはならないとされています(同条2項)。審査が必要と認められる場合は、この期間が延長されることがあります(同条3項)。つまり、届出が必要な契約では、契約の締結の時期を、届出と待機期間を踏まえて決める必要があります。契約書の署名を先に済ませてから届出に気づくと、規制に違反する可能性があるため、契約の準備の段階で、届出の要否を確認する手順を組み込んでおく必要があります。

届出の対象とならない技術導入契約の締結等でも、居住者は、非居住者との間で技術導入契約の締結等をしたときは、政令で定めるところにより、財務大臣と事業所管大臣に報告しなければなりません(外為法55条の6第1項。30条1項により届出を要するものを除く)。どの契約が届出の対象で、どの契約が報告の対象で、どの契約が対象外なのかは、政令などの定めによります。財務省などの公表資料で確認が必要です。

技術導入契約に関する外為法の手続

手続対象時期根拠
届出(事前)審査が必要となるおそれがあるものとして政令で定める技術導入契約の締結等契約の締結等の前に届け出る。受理から30日を経過するまでは契約の締結等をしてはならない外為法30条
報告(事後)非居住者との間の技術導入契約の締結等(届出の対象となるものを除く)締結等をしたとき、政令で定めるところにより報告する外為法55条の6

契約書の側では、導入する技術の対価(ロイヤルティ)の支払、技術の改良の権利の帰属、契約終了後の使用の制限などを定めます。これらの条項は、届出の内容として提出する「契約の条項」にもなります。届出の後で条項を変更すれば、条項の変更も技術導入契約の締結等に当たりえます(同法30条1項)。契約書の最終版を固める時点と、届出の時点との関係に気をつける必要があります。ロイヤルティの支払の条件や通貨の定めは、代金と為替のページの考え方と同じように書けます。

国外にある第三者への個人データの提供:個人情報保護法28条

海外の委託先に、顧客や従業員の情報を渡す場合、日本の個人情報保護法の規律が働きます。個人情報の取扱い全体の解説は別のガイドで扱っており、ここでは、海外の委託先との契約書に関係する部分に絞ります。

個人情報保護法27条1項は、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないと定めています。そして、28条1項は、外国にある第三者(個人の権利利益を保護する上で日本と同等の水準にあると認められる個人情報の保護に関する制度を有している外国として個人情報保護委員会規則で定めるものを除く。また、個人データの取扱いについて、日本の事業者が講ずべきこととされている措置に相当する措置を継続的に講ずるために必要な基準に適合する体制を整備している者を除く)に個人データを提供する場合には、法令に基づく場合などを除くほか、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならないと定めています。

この同意を得ようとする場合には、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、その外国における個人情報の保護に関する制度、その第三者が講ずる個人情報の保護のための措置、その他本人に参考となるべき情報を本人に提供しなければなりません(同条2項)。また、基準に適合する体制を整備している外国の第三者に提供した場合には、その第三者による相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、本人の求めに応じて、その措置に関する情報を本人に提供しなければなりません(同条3項)。

国内の委託先への提供であれば、個人データの取扱いの委託に伴う提供は、27条5項1号により、提供を受ける者は第三者に該当しないとされています。これに対し、外国にある第三者への提供には28条1項が適用され、同項後段により、27条(5項の委託の例外を含む)は適用されません。したがって、海外の委託先でも、本人の同意、同等水準国にあること、基準に適合する体制の整備のいずれかが必要です。

海外の委託先との個人データの契約の項目

  • 委託の目的と、取り扱う個人データの項目、対象となる人の範囲を特定する。
  • 個人データを取り扱う国と、保管する場所(サーバーの所在地)を明示し、変更するときは事前に通知することを定める。
  • 日本の法令に相当する安全管理措置を講ずる義務と、その内容(アクセス制限、暗号化、持ち出しの禁止)を書く。
  • 再委託を行うときは、事前の同意を必要とし、再委託先にも同じ義務を負わせる。
  • 漏えいなどが発生したときの通知の期限と、調査への協力、再発防止の義務を書く。
  • 契約が終了したとき、またはデータが不要になったときは、個人データを返還または消去し、消去したことを証明する。

知的財産を侵害する貨物の輸入差止:契約と通関のつながり

海外の取引では、知的財産権を侵害する貨物が国境を越えて入ってくる場面があります。関税法69条の11第1項は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権または育成者権を侵害する物品などを、輸入してはならない貨物と定めています(意匠権または商標権のみを侵害する物品には、別の定めがあります)。また、輸出についても、特許権などを侵害する物品は、輸出してはならない貨物とされています(同法69条の2第1項3号)。

権利者は、自己の権利を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、いずれかの税関長に対し、侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出し、その貨物が輸入されようとする場合に税関長が認定手続を執るべきことを申し立てることができます(同法69条の13第1項)。契約書の側では、買い手として輸入する商品が他者の権利を侵害していたとき、通関で止められたときの責任と費用を、売り手に負わせる条項を置くのが、実務的な備えです。

書き方の例(一般的な例) 権利侵害の物品に関する条項

売り手の保証

よくある書き方商品は、第三者の権利を侵害しない。
整えた書き方売り手は、商品およびその包装、表示が、日本国内および買い手が指定した販売地域において、第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する。

理由保証の範囲を、販売する国と地域で区切る。権利が国ごとに定まるため、地域を書かないと範囲が曖昧になる。

通関で止まったとき

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方商品が知的財産権の侵害を理由に通関を認められず、または差し止められたときは、売り手は、自己の費用でこれを解決し、買い手に生じた損害を賠償する。

理由通関での差止の責任と費用を売り手に置く。解決できないときの解除と代金の返還も書いておく。

起きがちなこと:権利・秘密・データの境目で見落とされる点

起きがちなこと

  • 成果物の権利を依頼した側のものと思い込んでいたが、契約書に帰属の定めがなく、権利は相手に残っていた。
  • 「著作権を譲渡する」と書いただけで、改変して新しい作品を作る権利(27条・28条の権利)が含まれないと推定される書き方だった。
  • 成果物に、委託先の既存の素材や協力者の作品が混ざっていて、その部分の権利が委託先に残り、使える範囲が不明確になった。
  • 秘密を渡す相手のもとで、誰が情報にアクセスできるかを決めておらず、再委託先に情報が渡った。
  • 技術導入契約の署名を済ませてから、事前の届出が必要な契約であったことに気づいた。
  • 海外の委託先に顧客名簿を渡したが、外国にある第三者への提供に必要な手順を踏んでいなかった。
  • 輸入した商品が、権利侵害を理由に通関で止められたが、契約書に売り手の責任の定めがなく、費用の分担が決まっていなかった。

よくあるご質問

海外の委託先が作ったものの権利は、依頼した側のものになりますか?

契約書に帰属の定めがなければ、原則として作った側に権利が残ります。日本の著作権法を例にとると、著作権は著作物を創作した人に生じるためです。依頼した側が権利を得たいなら、契約書で譲渡または利用許諾を定める必要があります。譲渡するときは、翻案権など(著作権法27条・28条の権利)も含めて明示し、著作者人格権の不行使も書いておきます。

権利を譲渡してもらえば、外国でも同じ権利が使えますか?

権利の成立と保護は、一般に国ごとの法令によって定まります。契約書で権利の帰属を定めても、その契約の効力は準拠法によって決まり、権利の保護は権利が主張される国の法令によります。外国での権利の内容は、その国の法令と条約で確認が必要で、本ガイドでは判断しません。契約書には、使用する地域を明示しておきます。

海外の相手に渡した秘密は、日本の法律で守られますか?

不正競争防止法は、秘密として管理されている事業活動に有用な情報で、公然と知られていないものを営業秘密として保護し、不正な取得・使用・開示を不正競争としています(2条6項、1項4号から9号)。一定の場合は国外での行為にも罰則が及びます(21条)。ただし、外国にいる相手に対して実際に手続をとれるかは別の問題です。契約書で、管理の方法と使用の範囲を書いておくことが出発点になります。

海外の企業から技術の使用許諾を受けるとき、届出は必要ですか?

外為法30条は、非居住者との間の技術導入契約の締結等のうち、審査が必要となるおそれがあるものとして政令で定めるものについて、事前の届出を求めています。届出の対象でない契約も、55条の6により報告が必要になることがあります。どちらの手続の対象になるかは政令などの定めによるため、財務省などの公表資料で確認が必要です。

顧客の情報を海外の委託先に渡すとき、気をつけることは何ですか?

個人情報保護法28条は、外国にある第三者に個人データを提供する場合について、本人の同意などの規律を置いています。28条1項後段により27条(5項の委託の例外を含む)は適用されないため、海外の委託先でも、本人の同意、同等水準国にあること、基準に適合する体制の整備のいずれかが必要です。契約書には、取り扱う国と保管場所、安全管理措置、再委託、漏えい時の通知、返還・消去を書きます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関

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