このページの要点
- 追加される問いは五つ。どこで争うか、どの国の法律か、どの言語か、どの通貨か、どの規制か。それぞれ別の法令と手当てが対応する。
- 管轄(どの裁判所か)と準拠法(どの法律か)は別の問い。管轄を日本にしても、準拠法が日本法になるわけではない。
- 順番は、相手の確認、取引の型、五つの問い、取引条件、締結の方法。相手の名称と所在国が曖昧なままでは、後の問いの前提が崩れる。
- 相手が消費者に当たると、管轄・準拠法・仲裁の条項の効力が制限される。事業のために契約する個人は事業者として扱われる。
結論:国内の契約書に足すべきなのは「五つの問い」です
海外の会社と取引をするときの契約書は、国内取引の雛形に「海外」と書き足せば出来上がる、というものではありません。国内の契約書は、相手も自分も日本の会社で、もめたときは日本の裁判所に行き、日本の法律で判断され、日本語で書かれ、円で払う、という前提を、書かなくても共有しています。その前提が一つずつ外れるのが海外取引です。外れた前提の数だけ、契約書に書くべき事項が増えます。
増える事項は、大きく五つの問いに整理できます。どこで争うか(裁判所または仲裁)、どの国の法律で判断するか、どの言語で書き、どの言語を正本とするか、どの通貨で、いつ、どのように払うか、どの国のどの規制に触れるか、の五つです。この五つは互いに関係しますが、それぞれ別の問いで、別の法令と別の実務の手当てが対応しています。一つの条項で全部を片づけようとすると、どこかが抜けやすくなります。
このページは、個別の条項の書き方に入る前の「全体の地図」です。五つの問いのそれぞれが、日本のどの法令で、どう決まるのかを大づかみにし、契約書をつくる前に何を、どの順番で確かめるかを示します。個々の問いの詳細は、このガイドの別のページに分けています。最初にこのページで全体を見て、気になる問いのページへ進んでください。
海外取引で追加される五つの問い(先に結論だけ)
- どこで争うか:契約書に書かなくても、日本の裁判所に訴えられる場合は法律で決まっている。書くなら管轄の合意か仲裁の合意(定めがないときの姿、合意の書き方)。
- どの国の法律か:当事者が選べる。選ばなければ、取引と最も関係の深い地の法になる。管轄とは別の問い。
- どの言語か:契約の成立に書面の言語の決まりはない。ただし、複数の言語版があるときは、どれが正本かを書かないと、食い違いで争いになる。
- どの通貨でどう払うか:準拠法が日本法なら、外国の通貨で金額を決めても、日本の通貨で弁済できる、という民法の規定がある。通貨・換算の基準・手数料を書かないと、受け取る額が読めない。
- どの規制か:輸出や輸入に許可や承認が要る貨物や技術がある。契約書で決められるのは、誰が取得し、取れなかったらどうするかまで。
管轄と準拠法は別の問いです
海外取引の契約書で最も混同されやすいのが、「管轄」と「準拠法」です。契約書に「本契約には日本法を適用し、東京地方裁判所を管轄裁判所とする」と一続きで書かれることが多いため、一つの事柄のように見えますが、この二つは答える問いが違います。
管轄(どこで争うか)と準拠法(どの法律か)
管轄
どの国の、どの裁判所(または仲裁廷)が、その紛争を審理できるか、という問い。
- 日本の裁判所が審理できるかどうかは、民事訴訟法の第3条の2から第3条の12までの国際裁判管轄の規定で決まる
- 当事者が合意で決めることができる(民事訴訟法第3条の7)。書面または電磁的記録でしなければ効力が生じない
- 仲裁にするなら、仲裁合意が必要で、これも書面(電磁的記録を含む)が必要(仲裁法第13条)
準拠法
審理する裁判所や仲裁廷が、契約の成立や効力をどの国の法律で判断するか、という問い。
- 法の適用に関する通則法が、日本の裁判所で使う基準を定めている
- 当事者が選択できる(同法第7条)。選択がなければ、最も密接な関係がある地の法による(同法第8条)
- 日本の裁判所が外国の法律を適用することも、外国の裁判所が日本の法律を適用することもある
管轄を日本の裁判所に決めたからといって、準拠法が日本法になるわけではありません。逆に、準拠法を日本法にしたからといって、日本の裁判所だけが審理できるわけでもありません。二つの条項は、別々に、意識して決めます。
たとえば、日本の会社が海外の会社に部品を売るとき、契約書に「準拠法は日本法」とだけ書いてあって、管轄の定めがなかったとします。この場合、買い手が代金を払わないとき、日本の会社は日本の裁判所に訴えを起こせるのでしょうか。それは準拠法の条項からは分かりません。管轄は、民事訴訟法の定める国際裁判管轄の規定にあたって決まります(詳しくは契約に管轄の定めがないときで扱います)。準拠法の条項は、日本の裁判所に訴えを起こせた場合に、契約の成立や効力をどの法律で判断するかを決めているにすぎません。
反対に、管轄の合意だけがあって準拠法の条項がない契約書では、裁判所は通則法の規定に従って、契約に最も密接な関係がある地の法を探すことになります(通則法第8条)。売買のように、一方の当事者だけが特徴的な給付をする契約では、その給付をする当事者の常居所地法(事業所があるときはその所在地の法)が、最も密接な関係がある地の法と推定されます(同条第2項)。つまり、どちらの国の会社が「特徴的な給付」をするのかによって、準拠法が変わりうるのです。選ばないことで、どの法になるのかが不確かになります(詳しくは準拠法の選び方で扱います)。
五つの問いと、答えを決める仕組み
| 問い | 何が決まるか | 主な根拠 | 契約書で書くこと |
|---|---|---|---|
| どこで争うか | 日本の裁判所が審理できるか。合意の効力。仲裁になるか | 民事訴訟法3条の2〜3条の12、仲裁法13条・14条 | 管轄の合意、または仲裁条項(機関・仲裁地・言語など) |
| どの国の法律か | 契約の成立と効力の判断に使う法 | 法の適用に関する通則法7条・8条 | 準拠法の条項(成立・効力・解釈) |
| どの言語か | 正本はどれか。食い違ったときの優先関係 | 契約の成立に書面の作成その他の方式は要しない(民法522条2項) | 言語版の条項、正本の指定、通知の言語 |
| どの通貨でどう払うか | 金額の表示通貨、換算、手数料、遅れたときの扱い | 準拠法が日本法なら、外国通貨建ての債権は円で弁済できる(民法403条) | 通貨、換算の基準日、送金手数料の負担、前払い・後払い |
| どの規制か | 許可・承認の要否、誰が取るか、取れないとき | 外為法48条・52条、関税法ほか | 遵守条項、許可取得の負担者、停止・解除 |
契約書を書く前に確かめる順番
五つの問いに答えを出す前に、契約書づくりの前提を確かめる順番があります。この順番を飛ばして、いきなり条項の文言から考えると、後で前提が崩れたときに、全部を書き直すことになります。実務で整理しやすい順番は、次のとおりです。
海外取引の契約書をつくる順番
取引の型の選び方は海外取引の型の選び方、締結の方法は海外の相手との契約の締結で扱います。
最初の「相手を確かめる」は、契約書の文言よりも前の作業ですが、後のすべての問いの出発点になります。日本の裁判所に訴えを起こせるかどうかは、被告となる相手の法人の主たる事務所や営業所がどこにあるかに左右されます(民事訴訟法第3条の2第3項)。判決を取ったときに執行する財産がどこにあるかも、相手がどの国の会社なのかによって決まります。相手の正式な名称と所在国が曖昧なまま署名した契約書は、後で「その会社は存在しない」「署名した人に権限がなかった」と言われたときに、手の打ちようがありません。
二つ目の「取引の型」は、見落とされやすいのですが、契約書の骨格を決めます。同じ海外の会社との取引でも、商品を売って代金をもらう取引、相手に自社商品を再販してもらう取引、相手に自社のために顧客を探してもらう取引、相手に製品をつくってもらう取引では、危険を負う者、在庫を持つ者、代金を回収する者が違います。それぞれに必要な条項も違います。型を決めないまま条項を並べると、売買の条項と代理の条項が混ざった契約書になります。
三つ目の五つの問いは、一度に答えを出すのではなく、互いの関係を見ながら決めます。たとえば、仲裁にするなら、管轄の合意は不要になり(仲裁合意の対象となる紛争について訴えが起こされても、被告の申立てがあれば、訴えは却下されます。仲裁法第14条)、代わりに仲裁地・言語・機関を決めることになります。準拠法を相手の国の法にするなら、その国の法の内容を調べる負担が自分に生じます。通貨を外貨建てにするなら、為替の変動を誰が負担するかを決める必要が生じます。一つの答えが、他の問いの答えを制約するのです。
相手が会社か個人かで、五つの問いの答えが変わります
五つの問いのうち、管轄・準拠法・仲裁の三つは、契約の相手が「事業者」か「消費者」かで、ルールが変わります。このガイドは事業者どうしの取引(いわゆるB2B)を中心に扱いますが、相手が個人になる場面があるため、境目を知っておく必要があります。
日本の民事訴訟法と通則法は、「消費者」を、個人(事業として、または事業のために契約の当事者となる場合を除く)と定義し、「事業者」を、法人その他の社団・財団と、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合の個人と定義しています(民事訴訟法第3条の4第1項、通則法第11条第1項)。したがって、個人であっても、事業のために契約をするのであれば、事業者として扱われます。海外のフリーランスや個人事業主に制作や開発を頼む場合、相手は個人でも「事業者」であることが通常です。一方、自社が個人の顧客に商品やサービスを提供する場合、その顧客は消費者になりえます。
消費者との契約では、次のような特則があります。条文の存在を知っておけば、「事業者用の雛形をそのまま使えるか」を判断する手がかりになります。
条文事業者間と違う扱いになる主な規定(消費者・労働者が相手の場合)
- 民事訴訟法3条の4第1項・第3項消費者から事業者への訴えは、消費者の住所が日本国内にあるときは日本の裁判所に提起できる。事業者から消費者への訴えには、3条の4第3項により、契約上の債務の履行地などを定める3条の3の規定の全体が適用されない
- 民事訴訟法3条の7第5項将来の消費者契約の紛争についての管轄の合意は、消費者の契約時の住所地の国の裁判所を指定する合意などの場合に限り効力がある
- 通則法11条準拠法を選んでも、消費者が自分の常居所地法の特定の強行規定の適用を事業者に表示したときは、その強行規定も適用される。選択がなければ消費者の常居所地法による
- 仲裁法附則3条消費者と事業者の間の将来の紛争についての仲裁合意は、当分の間、消費者が解除できる(消費者が申立人になった場合を除く)
労働契約・個別労働関係の紛争にも特則がありますが(民事訴訟法3条の4第2項・3条の7第6項、通則法12条)、このガイドは雇用・労務を扱いません。相手が個人のとき、事業者か消費者かの判断は、契約をする目的と立場によります。
事業者用の「管轄は東京地方裁判所の専属、仲裁は英語」といった条項を、そのまま消費者に適用しようとすると、消費者契約として効力が制限されるおそれがあります。契約の相手が消費者かどうかは、契約書をつくる最初の段階で確かめる項目です。相手が個人のとき、「事業のために契約をするか」を、取引の目的と注文書の記載から確かめておきます。
言語・通貨・規制の三つは、書き方で結果が変わります
管轄・準拠法・仲裁は法令のルールが細かく決まっているのに対し、言語・通貨・規制の三つは、法令が大枠だけを決め、契約書の書き方が結果を左右します。それぞれの要点を、ここで先に確認しておきます。
言語については、民法は、契約の成立に書面の作成その他の方式を要しないと定めています(民法第522条第2項)。契約書を日本語で書かなければならない、英語で書かなければならない、という一般的な決まりはありません。大切なのは、複数の言語版をつくるときに、どれが正本かを書いておくことです。「日本語版と英語版があり、食い違いがあるときは英語版が優先する」といった一文がないと、翻訳の微妙な違いが紛争の種になります。また、契約書に書かれた言語は、通知の言語、仲裁手続の言語、証拠として提出するときの翻訳の負担にも関係します(英文契約書の読み方で扱います)。
通貨については、準拠法が日本法なら、外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる、という民法の規定があります(民法第403条)。外貨建てで契約しても、支払う側は円で弁済できる余地があるということです。受け取る側が外貨での受領を前提にしているなら、「米ドルで支払う」と通貨を指定する、換算の基準日と基準となる為替相場を書く、送金手数料や中継銀行の手数料を誰が負担するかを書く、といった手当てが必要になります。為替が動いたときの負担の分け方も、書かなければ決まりません(海外取引の代金の決め方と為替で扱います)。
規制については、輸出や輸入に、許可や承認が必要な貨物があります。外国為替及び外国貿易法(外為法)は、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる特定の貨物の輸出について、経済産業大臣の許可を要するとしています(外為法第48条第1項)。また、貨物の輸入について承認を受ける義務を課すことがあります(同法第52条)。契約書で決められるのは、許可や承認を誰が取得するのか、取得できなかったときに契約をどうするか、までです。どの貨物が許可の対象になるかは、法令と所管官庁の資料で確かめることになります(輸出入規制と取引の審査で扱います)。
締結の前に確かめる問い
五つの問いに答えを出すために、契約書の条項を考える前に、取引をする側自身が確かめておく問いがあります。次の問いは、契約書の雛形の穴を探すためのものではなく、取引の実態を言葉にするためのものです。実態が言葉になっていれば、条項の書き方は自然に決まります。
確認の問いと理由契約前に確かめる問いと、問いを置く理由
相手の正式な名称と所在地は、公的な資料で確かめたか。契約の権限者は誰か。
名称や所在地が違えば、管轄も執行も変わる。署名した人に権限がなければ、契約が相手の会社に及ぶのかが争いになる。
取引の中身は、モノの売買か、再販か、代理か、製造か、使用許諾か。複数が混ざっていないか。
型が混ざると、危険や責任の所在が不明確になり、契約書の骨格が定まらない。
相手の財産は、どの国にあるか。回収が必要になったとき、どこで手続をするか。
判決や仲裁判断を取っても、相手の財産のある国で認められなければ回収できない。選ぶ管轄や仲裁の場所は、ここから逆算する。
相手が個人のとき、事業のための契約か。消費者に当たらないか。
消費者に当たれば、管轄・準拠法・仲裁の条項の効力が制限される。
代金は、どの通貨で、前払いか後払いか。為替が動いたとき、誰が受け止めるか。
通貨と時期で、受け取る額と回収のリスクが変わる。協議するとだけ書いても、協議が整わなければ決まらない。
取引する貨物や技術は、輸出や輸入の許可・承認の対象に当たらないか。相手は規制の対象でないか。
許可が取れない取引は、契約があっても履行できない。契約の中で、そのときの扱いを決めておく必要がある。
契約書は、どの言語で、何通つくり、どの言語を正本とするか。
言語版が食い違ったときの優先順位が決まっていないと、翻訳の違いで争いになる。
このガイドの読み方
このガイドは、契約書の中身と、その背後にある国際私法・国際民事手続・輸出入規制の仕組みを扱います。個別の紛争の代理、外国法の内容の判断、通関・関税の計算、知的財産権の出願・登録は扱いません。外国の法令や外国での手続は、その国の法令によるため、ここでは判断しません。日本の法令の条文は、e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。
各ページの役割は、次のとおりです。自分の状況に近いところから読み進めて構いません。
ページの案内
| 知りたいこと | 読むページ | 扱う内容 |
|---|---|---|
| どの型で契約するか | 海外取引の型の選び方 | 直接売買・販売店・代理店・委託製造・使用許諾・現地法人の違いと、契約書の骨格 |
| 管轄の定めがないとき | 契約に管轄の定めがないとき | 国際裁判管轄の条文の姿。日本の裁判所で訴えられる場合と、訴えられない場合 |
| 管轄の合意の書き方 | 国際的な管轄の合意の書き方 | 合意の要件、専属か非専属か、保全処分、消費者との特則 |
| 準拠法の選び方 | 準拠法の選び方 | 当事者の選択、選ばなかったとき、方式、強行規定と公序 |
| 仲裁条項 | 仲裁条項の書き方 | 機関・仲裁地・言語・仲裁人の数・費用・保全処分 |
| 回収 | 勝っても回収できないことを防ぐ | 外国判決・仲裁判断の承認と執行、相手の財産のある国 |
| 英文契約書 | 英文契約書の読み方 | 標準的な構造と一般条項、日本語との食い違い |
| 締結 | 海外の相手との契約の締結 | 署名者の権限、電子署名、成立時期、通知 |
| 代金と為替 | 海外取引の代金の決め方と為替 | 通貨・送金・前払い・信用状・為替変動の分担 |
| 輸出入規制 | 輸出入規制と取引の審査 | 貨物・技術・制裁、遵守・停止・解除の条項 |
| 権利・秘密・データ | 知的財産・秘密保持・個人データ | 成果物の帰属、秘密、国外への個人データの提供 |
| トラブルのとき | 海外の相手とトラブルになったとき | 通知・証拠・送達・交渉から訴訟・仲裁までの流れ |
起きがちなこと
海外取引の契約書で、全体の枠組みを意識しないまま署名したときに起きがちなことを、一般的な傾向として挙げます。いずれも、特定の取引を指すものではありません。
起きがちなこと
- 準拠法は日本法と書いたが、管轄の定めがない。相手が代金を払わなくなったとき、日本の裁判所に訴えを起こせるのか、相手の国で訴えるしかないのかが、契約書から読めない。
- 管轄は日本の裁判所の専属と書いたが、相手の財産は外国にしかない。日本で勝訴しても、その国で認められなければ回収できない。
- 日本語版と英語版の両方に署名したが、どちらが正本かの記載がない。翻訳の違いが、解釈の争いの出発点になる。
- 代金の通貨が書かれていない。見積書の通貨と、請求書の通貨が違い、受け取る額が合わない。
- 「関係法令を遵守する」と一文だけ書いてある。許可が必要な貨物だと分かったとき、誰が許可を取り、取れなければ契約をどうするかが決まっていない。
- 相手が個人事業主か消費者か分からないまま、事業者用の仲裁条項を使った。相手が消費者に当たれば、仲裁合意は解除されうる。
- 取引の型が混ざっている。再販を前提にした契約書に、相手の代理権限をうかがわせる文言が残り、相手が結んだ契約の責任を負うのかが不明確になる。
- 署名した人の権限を確かめなかった。後から相手の会社が「その人に権限はなかった」と主張し、契約の成立そのものが争われる。
これらの多くは、契約書の文言を整える以前に、取引の枠組みを言葉にしていれば防げます。次に進むときは、まず取引の型を確かめ、そのうえで、管轄については定めがないときの姿から合意の書き方の順に読むと、五つの問いのうち最も条文の多い部分の見通しが立ちます。
よくあるご質問
国内の契約書の雛形に「海外」の一文を足すだけでは足りませんか?
足りません。国内の契約書は、相手も日本の会社で、日本の裁判所と日本法と日本語と円を前提にしています。海外取引ではその前提が外れるため、どこで争うか、どの国の法律か、どの言語か、どの通貨か、どの規制かという五つの問いを、条項として加える必要があります。雛形に一文を足すだけでは、管轄と準拠法の区別、正本の指定、通貨と換算、規制の遵守や停止といった事項が抜けます。
管轄と準拠法は、同じ条項に書いても問題ありませんか?
同じ条の中に並べて書くことは差し支えありませんが、二つは別の問いです。管轄はどの国の裁判所や仲裁廷が審理するかで、民事訴訟法の第3条の2から第3条の12に規定があります。準拠法は、審理する側が契約の成立と効力をどの法律で判断するかで、法の適用に関する通則法が定めています。それぞれに必要な要件や条項の書き方があるので、一文で済ませず、別々に確認します。
契約書は英語で書かなければなりませんか?
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式は要しません(民法第522条第2項)。契約書の言語についての一般的な決まりもありません。ただし、複数の言語版があるときは、どれが正本かを書いておかないと、食い違いが争いのもとになります。通知や仲裁手続の言語も、あわせて決めておきます。
相手が個人事業主のときも、消費者契約の特則が適用されますか?
個人であっても、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合は、「事業者」として扱われ、消費者には当たりません(民事訴訟法第3条の4第1項、通則法第11条第1項)。海外のフリーランスに制作を頼むような取引は、通常は事業者どうしの取引です。一方、相手が個人の顧客として商品やサービスを受ける立場であれば、消費者に当たりえます。判断は、契約をする目的と立場によります。
海外取引の契約書を作る順番はありますか?
相手の確認、取引の型の決定、五つの問いへの答え、取引条件の記載、締結の方法の決定、という順番が整理しやすいです。相手の名称や所在国が曖昧なまま条項を書くと、管轄や執行の前提が崩れます。取引の型が定まらないまま条件を並べると、売買と代理が混ざった契約書になります。五つの問いは、互いに関係するので、一緒に見ながら決めます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関