このページの要点
- 日本の裁判所の管轄は、民事訴訟法3条の2〜3条の12で決まる。契約書に管轄の条項がなくても、要件を満たせば管轄はある。
- 契約上の債務の履行地による管轄(3条の3第1号)は、契約で定めた履行地か、契約で選んだ準拠法による履行地が日本にあるときに使える。
- 日本の営業所、日本で事業を行っていること、日本にある財産も管轄の手がかりになるが、財産の価額が著しく低いときは使えない。
- 管轄があっても、特別の事情があれば訴えは却下される(3条の9)。被告が管轄を争わずに応訴すれば管轄が生じる(3条の8)。
結論:定めがなくても、日本の裁判所に訴えを起こせる場合は法律で決まっています
海外の会社との契約書に管轄の条項がなくても、紛争が起きたときに誰も訴えを起こせない、ということにはなりません。日本の裁判所が外国の会社を相手とする事件を審理できるかどうかは、民事訴訟法の第3条の2から第3条の12までの規定(国際裁判管轄の規定)が定めています。契約書に何も書いていないときは、この規定が、そのまま答えになります。
ただし、この規定は、「日本の裁判所に訴えを起こせる場合」を、いくつかの類型で定めているにすぎません。海外の相手が日本に事務所も営業所も財産も持たず、契約書にも日本で履行する旨の定めがなければ、日本の裁判所は管轄をもたない、という結論になることがあります。逆に、管轄が認められる場合でも、事案の性質や証拠の所在などから、日本の裁判所が審理するのは適当でないと判断されれば、訴えが却下されることがあります(民事訴訟法第3条の9)。「定めがなければ日本で訴えられる」とも、「定めがなければ相手の国で訴えるしかない」とも、一概には言えません。
このページでは、管轄の条項を入れなかったときに、法律上どういう姿になるのかを、条文に沿って順に確かめます。管轄の合意を書くときの要件と条項の書き方は、次のページ国際的な管轄の合意の書き方で扱います。ここでは、合意がない状態の法律上の姿に絞ります。
先に結論だけ(管轄の定めがないとき)
- 日本の裁判所に訴えを起こせるかは、民事訴訟法3条の2〜3条の12の国際裁判管轄の規定で決まる。契約書に定めがなくても、規定の要件を満たせば、日本の裁判所は管轄をもつ。
- 相手の主たる事務所・営業所が日本にあるときは、日本の裁判所に管轄がある(3条の2)。
- 契約書で定めた債務の履行地が日本にあるとき(または、選択した準拠法によれば履行地が日本にあるとき)も、日本の裁判所に管轄がある(3条の3第1号)。履行地を書かなかった契約書では、この類型に入らないことがある。
- 日本に営業所がある、日本で事業を行っている、日本に差し押さえることができる財産がある、といった場合にも管轄が認められる類型がある(3条の3第3号〜第5号)。
- 管轄があっても、特別の事情があるときは、訴えが却下されることがある(3条の9)。
国際裁判管轄と、国内の管轄は別の問いです
最初に、用語を整理しておきます。民事訴訟法の「管轄」には、二つの段階があります。一つ目は、日本の裁判所が、そもそもこの事件を審理する権限(国際裁判管轄、条文では「管轄権」)をもつかどうか、という段階です。二つ目は、日本の裁判所に管轄があるとして、日本国内のどの裁判所(どの地の、地方裁判所か簡易裁判所か)が担当するのか、という国内の土地管轄・事物管轄の段階です。このページが扱うのは一つ目です。
国内の土地管轄は、被告の普通裁判籍の所在地(法人であれば主たる事務所または営業所の所在地。民事訴訟法第4条)や、財産権上の訴えについての義務履行地(同法第5条第1号)などを基準に決まります。国際裁判管轄で日本の裁判所に管轄が認められたあとで、東京なのか大阪なのかが決まる、という順序です。外国の会社には日本に営業所がないことが多いため、国内の土地管轄は、請求の目的や差し押さえることができる被告の財産の所在地などから決まることになります(同法第5条第4号)。
日本の裁判所で外国の相手を訴えるときの確認の順序
本ページは一番目から三番目までを扱います。送達や訴訟の進め方は海外の相手とトラブルになったときで扱います。
もう一点、時点の問題があります。日本の裁判所の管轄権は、訴えの提起の時を標準として定められます(民事訴訟法第3条の12)。訴えを起こした時点で管轄の要件を満たしていれば、その後に相手が日本の営業所を閉じても、管轄は失われません。逆に、訴えを起こした時点で要件を満たしていなければ、後から日本に財産が移ってきても、その訴えの管轄は認められません。また、裁判所は、管轄権に関する事項について、職権で証拠調べをすることができます(同法第3条の11)。当事者が争わなくても、裁判所は管轄の要件を自ら確かめるということです。
相手の住所・主たる事務所が日本にあるとき:被告の所在地による管轄
最も基本的な類型は、被告の所在地による管轄です。民事訴訟法は、人に対する訴えについて、被告の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に管轄があると定めています(第3条の2第1項)。法人その他の社団または財団に対する訴えは、その主たる事務所または営業所が日本国内にあるとき、事務所も営業所もない場合などには、代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときに、管轄が認められます(同条第3項)。
これを海外取引に当てはめると、相手が外国の会社で、その主たる事務所も営業所も外国にあるなら、この規定だけでは、日本の裁判所の管轄は認められません。逆に、日本の会社が海外の相手から訴えを起こされるときは、日本の会社の主たる事務所は日本にあるので、日本の裁判所に管轄が認められます。つまり、被告の所在地による管轄は、「訴えられる側」の所在地に左右されます。売り手の日本の会社が買い手の代金不払いで訴えるなら、被告は買い手なので、この規定は使えません。他の類型で日本の裁判所に管轄を認めてもらう必要があります。
契約上の債務の履行地が日本にあるとき:書き方で結論が変わる
契約に関する訴えで、最も使われるのが、契約上の債務の履行地による管轄です。民事訴訟法第3条の3第1号は、契約上の債務の履行の請求を目的とする訴え、または契約上の債務に関して行われた事務管理もしくは生じた不当利得に係る請求、契約上の債務の不履行による損害賠償の請求その他契約上の債務に関する請求を目的とする訴えは、契約において定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき、または契約において選択された地の法によれば当該債務の履行地が日本国内にあるときに、日本の裁判所に提起することができると定めています。
この条文の読み方で、押さえておくべき点が三つあります。
一つ目は、履行地は、契約書の中で定められているか、契約で選択された地の法によって決まる場合に限られる、という点です。条文の文言に沿って読めば、契約書に履行地が書かれておらず、準拠法の選択もないときは、この類型には入りません。準拠法を日本法とだけ書いて、履行地を書かなかった契約書では、準拠法の条項を通じて履行地が決まる道が開かれます。たとえば、日本法が準拠法であれば、弁済をすべき場所について別段の意思表示がないとき、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所、その他の弁済(金銭の支払など)は債権者の現在の住所でしなければならない、という民法の規定が参照されます(民法第484条第1項)。すると、日本の売り手の代金請求(金銭債務)は、債権者である売り手の住所が日本にあるので、履行地が日本になります。一方、買い手が売り手に対して、目的物の引渡しや契約不適合を理由とする請求をするときは、引渡しの債務の履行地が基準になり、目的物が海外にあれば、履行地は日本ではありません。
二つ目は、履行地は、請求ごとの債務について判断される、という点です。一つの契約から、売り手の代金債務、買い手の引渡請求、損害賠償請求など、複数の債務が生じます。それぞれの履行地が違えば、それぞれに管轄が分かれる可能性があります。
三つ目は、履行地を契約書に書くときに、履行地の書き方が管轄を意図せず動かすという点です。引渡しの場所を「買い手の工場」と書けば、売り手の引渡債務の履行地は買い手の国になり、買い手が引渡債務の不履行を理由に訴えるとき、買い手の国の裁判所に管轄が生じる方向に働きます(外国の裁判所の管轄は、その国の法によります)。代金の支払場所を「売り手の指定する銀行口座がある地」と書くか、「買い手の所在地」と書くかでも、金銭債務の履行地が変わります。履行地は、費用や危険の移転とあわせて決めた条項が、管轄の面でも効いてくるのです。
書き方の例(一般的な例) 引渡しと支払の場所の書き方(管轄に影響する条項)
引渡しの場所
理由引渡しの場所は、費用と危険の分担を決めるための条項。管轄に及ぶ影響を意識して、管轄の条項とは別に、管轄を定める趣旨ではないことを添える。
支払の場所
理由金銭債務の履行地を、支払の方法の記載として明確にしておく。口座の所在地は、履行地を考えるうえでの手がかりになる。
契約書の履行地の書き方を、管轄を考えて決めるべき、というのは過剰な要求に聞こえるかもしれません。しかし、管轄の条項がない契約書では、履行地の記載が、日本の裁判所に訴えを起こせるかどうかを左右する数少ない手がかりになります。これは、管轄の条項を書けば済むことです。管轄の合意を書かない選択をするなら、履行地の書き方が管轄に及ぼす影響を、意識して書く必要があります。
日本に営業所がある、日本で事業を行っている、日本に財産がある:その他の類型
民事訴訟法第3条の3には、履行地のほかにも、日本の裁判所に管轄を認める類型が並んでいます。海外取引でよく関係するのは、次の四つです。
条文民事訴訟法3条の3のうち、海外取引でよく関係する類型
- 3条の3第3号(財産権上の訴え)請求の目的が日本国内にあるとき。または、金銭の支払を請求する訴えで、差し押さえることができる被告の財産が日本国内にあるとき(その財産の価額が著しく低いときを除く)
- 3条の3第4号(事務所・営業所)事務所または営業所を有する者に対する訴えで、その事務所・営業所における業務に関するものは、その事務所・営業所が日本国内にあるとき
- 3条の3第5号(日本で事業を行う者)日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社を含む)に対する訴えで、その者の日本における業務に関するものは、日本の裁判所に提起できる
- 3条の6(併合請求)一つの訴えで数個の請求をする場合、日本の裁判所が一つの請求に管轄をもち、他の請求との間に密接な関連があるときは、まとめて日本の裁判所に提起できる
いずれも、各類型の要件を満たすかどうかの判断は、事実関係によります。日本の営業所の有無、継続した取引の有無、財産の所在などは、個別に確かめる事項です。
財産の所在による管轄(第3号)は、相手が日本国内に差し押さえることができる財産を持っているときに使えます。たとえば、日本の取引先に対する売掛金や、日本の銀行にある預金などが考えられます。ただし、その財産の価額が著しく低いときは、この類型は使えません。取るに足りない財産を口実に、日本の裁判所に訴えを起こすことを防ぐための除外です。相手の財産が日本のどこにあるかを把握するには、取引の過程で得た情報(相手の日本の取引先、日本国内の口座など)の記録が手がかりになります。
日本で事業を行う者に対する訴え(第5号)は、日本において取引を継続してする外国会社が含まれます。ただし、訴えが「その者の日本における業務に関するもの」でなければなりません。日本向けのウェブサイトで継続的に商品を販売している外国会社が、日本の顧客との取引について訴えられる場合などが想定されますが、どこまでが「日本において取引を継続してする」に当たるかは、取引の態様によります。ここでは条文の構造を示すにとどめ、個別の当てはめは行いません。
相手が消費者・労働者のとき、応訴したとき、管轄があっても訴えが却下されるとき
ここまでの類型に加えて、管轄の有無を左右する規定が三つあります。
消費者契約と労働関係の特則(第3条の4):消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時または契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起できます(同条第1項)。他方、事業者から消費者への訴えと、事業主から労働者への訴えには、前条(契約上の債務の履行地などを定める第3条の3)の規定は、その全体が適用されません(同条第3項)。事業者が消費者に代金を請求するときに、履行地の定めを根拠に日本の裁判所に訴えを起こすことはできず、消費者の住所などを手がかりに管轄を考える必要があります。事業者間の取引のつもりが、実は相手が消費者に当たるとき、この特則が働きます。
応訴による管轄(第3条の8):被告が、日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで、本案について弁論をし、または弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は管轄権を有します。管轄が本来なかった事件でも、被告が管轄を争わずに中身の主張を始めれば、管轄が生じます。海外の相手が日本の裁判所に訴えられたとき、管轄の抗弁を最初に出すかどうかが、手続の最初の分かれ目になります。
特別の事情による却下(第3条の9):日本の裁判所に管轄があることになる場合でも、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理・裁判をすることが当事者間の衡平を害し、または適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、訴えの全部または一部を却下できます。ただし、日本の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意に基づいて訴えが提起された場合は、この規定は適用されません。管轄の条項がない契約書では、この「特別の事情」による却下の可能性が、常に残ることになります。
管轄の定めがない契約書での見通し
売り手が代金を請求する
売り手が日本の会社、買い手が外国の会社
- 被告の所在地(3条の2)は買い手の国のため使えない
- 履行地(3条の3第1号)が日本と読めるかが鍵。契約書の履行地の定めと準拠法の選択を見る
- 日本に買い手の財産や営業所があれば別の類型も候補
- 特別の事情による却下の余地は残る
買い手が不具合を主張する
買い手が外国の会社、売り手が日本の会社
- 被告(売り手)の主たる事務所が日本のため、日本の裁判所に管轄がある(3条の2)
- 買い手は、自国の裁判所に訴えを起こせるかも検討する(その国の法による)
- 日本の売り手は、日本で応訴することになる
あくまで条文の構造に沿った一般的な見通しです。実際の管轄の有無は、契約の内容、請求の内容、取引の事実によって個別に判断されます。外国の裁判所に管轄があるかは、その外国の法によります。
「専属」の規定:日本の裁判所だけが審理できる事件
最後に、日本の裁判所に管轄が専属する事件があります。民事訴訟法第3条の5は、会社の組織に関する訴えなど、登記・登録に関する訴え(登記・登録をすべき地が日本国内にあるとき)、設定の登録により発生する知的財産権の存否や効力に関する訴え(その登録が日本においてされたものであるとき)について、日本の裁判所の専属としています。これらは契約書の管轄の定めがあっても動かせず、また、日本の裁判所の専属管轄に関する定めがある場合は、前述の一般的な管轄の規定(第3条の2から第3条の4まで、第3条の6から第3条の9まで)は適用されません(第3条の10)。海外取引の契約書で通常問題になる売買や委託の紛争は、この専属の規定には当たりません。
契約の段階で確かめる問いと、起きがちなこと
管轄の定めを置かない契約書でも、あとから「訴えられる場所」が決まることを前提に、次のように確かめておきます。管轄の条項を書かないと決めた場合でも、これらの問いに答えられる状態にしておけば、後で慌てずに済みます。
確認の問いと理由管轄の条項を置かないと決める前に確かめる問い
相手は、日本国内に営業所・財産・取引先をもっているか。
日本に管轄が認められる類型(営業所、財産、日本で事業を行う者)に当たるかどうかは、日本との接点の有無で決まる。接点がなければ、日本での訴えの足がかりが乏しい。
契約書の中で、引渡しと支払の場所をどう書いているか。準拠法は選んでいるか。
履行地による管轄は、契約書の定めか、選択した準拠法で決まる。書いていなければ、この類型を使えない可能性がある。
相手の財産は、どの国にあるか。その国で、日本の判決は認められるか。
管轄が認められても、判決が相手の財産のある国で認められなければ、回収できない。管轄の有無より先に確かめる。
相手が消費者に当たる可能性はないか。
消費者契約では、事業者から消費者への訴えに履行地の管轄が使えない。
定めを置かないことで、相手が先に自国の裁判所に訴えを起こす余地はないか。
日本が管轄をもつかどうかと、相手の国が管轄をもつかどうかは別。相手の国の法で、相手の国に管轄が認められることがある。
契約書に管轄の条項を置かずに済ませる選択は、条文の姿を理解したうえで、あえてそうする場合に限られます。理解しないまま省略すると、後で日本の裁判所に訴えを起こせるのか、相手の国で応訴するしかないのかが、契約書から読み取れない状態になります。
起きがちなこと
- 準拠法を日本法と書いたので、日本の裁判所で解決できると思っていた。管轄は準拠法とは別の問いで、日本の裁判所に管轄があるかは、国際裁判管轄の規定で決まる。
- 履行地を書かなかった契約書で、売り手が代金を請求しようとしたが、被告の所在地は外国。準拠法の選択もなく、履行地による管轄の類型に入るか分からない。
- 引渡しの場所を「買い手の指定する場所」と書いたため、買い手が引渡債務の不履行を理由に、自国の裁判所に訴えを起こす足がかりができた。
- 相手の財産が日本にあると思って日本で訴えたが、財産の価額が著しく低いとして、財産所在地による管轄は認められなかった。
- 管轄が認められる場面でも、証拠の所在地や被告の負担などの特別の事情から、訴えの全部または一部が却下されるおそれがあることを想定していなかった。
- 外国の相手が日本の裁判所に訴えられたとき、管轄の抗弁を出さずに中身の主張を始めて、応訴管轄が生じた。
- 相手が個人で、消費者契約に当たった。事業者から消費者への訴えに、履行地による管轄を使えなかった。
管轄の定めがない契約書の姿を確かめたうえで、管轄の合意を書くか、仲裁にするかを選ぶ段階に進みます。管轄の合意は国際的な管轄の合意の書き方、仲裁は仲裁条項の書き方で扱います。また、全体の五つの問いは海外取引の契約書で決めること、取引の型ごとの契約書の骨格は海外取引の型の選び方で確かめられます。
よくあるご質問
契約書に管轄の条項がないと、海外の相手を日本の裁判所で訴えられませんか?
訴えられないとは限りません。日本の裁判所に管轄があるかどうかは、民事訴訟法の第3条の2から第3条の12までの規定で決まります。たとえば、契約で定めた債務の履行地が日本国内にあるとき(同法第3条の3第1号)、相手が日本に営業所をもつとき(同条第4号)、日本で事業を行っているとき(同条第5号)、差し押さえることができる財産が日本にあるとき(同条第3号)などです。いずれにも当たらなければ、日本の裁判所には管轄が認められないことがあります。
準拠法を日本法にすれば、日本の裁判所に訴えを起こせますか?
準拠法と管轄は別の問いです。準拠法は、審理する裁判所が契約の成立や効力をどの法律で判断するかを決めるもので、日本の裁判所に管轄があるかどうかは決めません。ただし、準拠法の選択は、履行地の判断には関係します。契約で選択された地の法によれば債務の履行地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に訴えを提起できます(民事訴訟法第3条の3第1号)。
日本の裁判所に管轄があるのに、訴えが却下されることはありますか?
あります。事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理・裁判をすることが当事者間の衡平を害し、または適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、訴えの全部または一部が却下されます(民事訴訟法第3条の9)。ただし、日本の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意に基づいて訴えが提起された場合は、この規定は適用されません。
相手が消費者のときは、管轄の考え方が変わりますか?
変わります。消費者契約に関する消費者からの事業者に対する訴えは、消費者の住所が日本国内にあるときは日本の裁判所に提起できます。他方、事業者から消費者への訴えには、契約上の債務の履行地などを定める第3条の3の規定の全体が適用されません(民事訴訟法第3条の4第1項・第3項)。事業者かどうかは、契約をする目的と立場で判断され、事業のために契約する個人は、事業者に当たります。
海外の相手が日本の裁判所に訴えられたとき、何が管轄の分かれ目になりますか?
被告が、日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで、本案について弁論をしたときは、裁判所は管轄権を有するとされます(民事訴訟法第3条の8)。管轄を争うなら、中身の主張に入る前に抗弁を出す必要があります。日本の裁判所の管轄権は、訴えの提起の時を標準として定められる点(同法第3条の12)も、争いの前提になります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関