輸出入規制と取引の審査:貨物・技術・支払・通関と契約書の条項

契約書にどう書いても、許可が必要な貨物を許可なく輸出することはできません。規制を貨物・技術・支払・通関の四つの層に分けて条文で確かめ、契約書には守るだけでなく、止める・解除する手順を書く方法を整理します。

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契約書に関係法令を遵守するとだけ書いても、許可を誰が取るのか、取れなかったら契約はどうなるのかは決まりません。

このページの要点

  • 貨物の輸出は外為法48条、技術の提供は同法25条、輸入は同法52条、通関は関税法67条。四つは別の制度で、一つの許可が他を不要にしない。
  • 許可の対象は貨物の種類と仕向地の組合せで決まり、用途や需要者で許可が必要になる場合もある。該非の確認を誰がいつ行うかを決める。
  • 業として輸出を行う者には、輸出者等遵守基準を守る義務がある(外為法55条の10)。最終用途の情報を求め、確認が済むまで出荷を止める根拠を契約書に置く。
  • 契約書には、遵守、許可の負担者、最終用途の確認、停止・解除、再輸出の制限を書く。外国公務員等への不正の利益の供与は不正競争防止法18条で禁止されている。

結論:規制は貨物・技術・支払・通関の四つの層で働く。契約書には「守る」だけでなく、止める・解除する手順を書く

海外の相手との取引では、契約書の内容とは別に、法令による規制がかかります。契約書にどう書いても、許可が必要な貨物を許可なく輸出することはできません。逆に、規制は契約書の条項で回避できるものではないので、契約書は、規制を守ることを前提に、守れなかったときや守れそうにないときの手順を書く役割を担います。契約書に「関係法令を遵守する」と一文だけ書いてあっても、許可は誰が取るのか、取れなかったら契約はどうなるのか、相手が規制の対象者と分かったらどうするのか、は決まりません。

規制は、大きく四つの層に分けると整理しやすくなります。①貨物そのものの輸出入に許可・承認が必要になる層(外国為替及び外国貿易法〈外為法〉48条・52条)。②貨物ではなく技術の提供に許可が必要になる層(同法25条)。③特定の国や者に対する支払や取引が禁止または許可制になる層(同法16条など)。④貨物を輸出入するときの通関の手続と、輸出入してはならない貨物の層(関税法67条・69条の2・69条の11)です。このページでは、この四つの層の構造を条文で確かめたうえで、契約書に入れる条項を整理します。通関の実務や関税の計算、個別の貨物が許可の対象になるかの判断は、このガイドの対象外です。

  • 貨物の輸出は、政令で定める特定の地域・貨物について、経済産業大臣の許可が必要になる(外為法48条1項)。リスト規制の貨物のほか、用途や需要者により許可が必要になる場合もある。
  • 技術の提供も、貨物とは別に許可が必要になる場合がある(外為法25条1項)。設計図やソフトウェアのデータを送るだけでも該当しうる。
  • 輸出入の申告・許可は関税法67条。輸出してはならない貨物(69条の2)と輸入してはならない貨物(69条の11)は別に定められている。
  • 輸出を業として行う者には、輸出者等遵守基準を守る義務がある(外為法55条の10)。
  • 契約書には、遵守条項、許可の取得の負担者、取引の停止、解除、再輸出の制限、取引相手の審査を書く。

貨物の輸出入の規制:外為法48条・52条と、政令・省令の関係

外為法48条1項は、国際的な平和および安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならないと定めています。この「政令」が輸出貿易管理令で、同令1条1項は、別表第一の中欄に掲げる貨物の、同表の下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出を、許可の対象としています。許可を受けようとする者は、経済産業省令で定める手続に従って申請します(同令1条2項)。

ここで押さえておきたいのは、許可の対象は、貨物の種類だけで決まらず、仕向地(輸出先)との組合せで決まるという点です。同じ貨物でも、仕向地によって許可が必要な場合と不要な場合があります。そして、別表に掲げる貨物(いわゆるリスト規制の貨物)に当たらない貨物でも、用途や需要者によっては、許可を受ける義務が課される場合があります。外為法48条2項は、経済産業大臣は、1項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、同項の特定の種類の貨物を同項の特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができると定めています。別表第一の1〜15の項(リスト規制)に当たらない貨物でも、16の項(キャッチオール規制)により、用途・需要者・経済産業大臣の通知によっては許可が必要です(外為法48条、輸出貿易管理令別表第一16の項・4条1項3号・4号)。

このほか、一定の貨物の輸出には、許可ではなく承認が必要です。外為法48条3項は、特定の種類もしくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者、または特定の取引により貨物を輸出しようとする者に対し、必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができると定めています。輸出貿易管理令2条は、承認が必要な貨物の輸出を列挙しています。輸入についても、外為法52条は、貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがあると定めています。

輸出入の規制の主な条文

対象内容根拠
貨物の輸出(許可)政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出は、経済産業大臣の許可が必要外為法48条1項、輸出貿易管理令1条
貨物の輸出(用途等による許可)特定の種類の貨物を、1項の特定の地域以外に輸出する者にも、政令で許可を受ける義務を課すことができる外為法48条、輸出貿易管理令別表第一16の項・4条1項3号・4号
貨物の輸出(承認)特定の貨物・地域・取引について、承認を受ける義務を課すことができる外為法48条3項、輸出貿易管理令2条
貨物の輸入(承認)貨物の輸入は、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課されることがある外為法52条
技術の提供特定技術を特定国で提供する取引などは、経済産業大臣の許可が必要外為法25条
輸出入の申告・許可貨物を輸出・輸入しようとする者は、税関長に申告し、検査を経て許可を受ける関税法67条

許可を受けないで規制対象の貨物を輸出した場合の罰則は重く、たとえば、外為法48条1項の許可を受けないで輸出をしたときは、7年以下の拘禁刑もしくは2000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する、と定められています(同法69条の7第1項2号。目的物の価格の5倍が2000万円を超えるときは、罰金は価格の5倍以下)。承認を受けないで貨物を輸出したとき(48条3項)や、輸入承認を受けないで貨物を輸入したとき(52条)は、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する、と定められています(同法69条の8第1項)。契約書の条項と、罰則の重さは、天秤にかけられる関係にはありません。契約上の義務があっても、許可がなければ輸出できません。

どの貨物が許可の対象になるかは、貨物の仕様と仕向地によって決まり、経済産業省が公表する資料(該非判定の考え方、貨物・技術のリスト、パラメータシート)で確認することになります。原文の確認が必要な部分であり、このガイドでは貨物ごとの該当性を判断しません。取引の前に、自社の貨物が許可の対象になるかを確認する作業(該非の確認)を、誰が、いつ行うのかを、契約書の中で決めておくことが、実務上の出発点です。

技術の提供の規制:貨物を送らなくても、図面やデータの提供が対象になる

海外の委託先に製造や開発を頼む取引では、貨物の輸出より先に、設計図、仕様書、ソフトウェアといった技術の提供が行われます。外為法25条1項は、国際的な平和および安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造または使用に係る技術(特定技術)を、特定の外国において提供することを目的とする取引、または特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者などは、経済産業大臣の許可を受けなければならないと定めています。

この規制の特徴は、技術が記録された媒体を物理的に輸出する場合だけでなく、電気通信による送信も対象になりうる点です。同条3項は、特定国を仕向地とする特定技術を内容とする情報が記載・記録された文書、図画または記録媒体の輸出や、特定国で受信されることを目的として行う電気通信による特定技術を内容とする情報の送信(本邦内にある電気通信設備からの送信に限る)について、政令で許可を受ける義務を課すことができると定めています。つまり、図面の電子データを電子メールやクラウドで海外の委託先に送る行為も、規制の対象になる可能性があります。

また、外国において技術を提供する取引だけでなく、居住者が特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引も、25条1項の対象になります。許可の対象になるかどうかは、技術の内容と提供先で決まり、貨物と同じように、経済産業省の公表資料で確認が必要です。技術の提供に関する罰則も、外為法69条の7第1項1号などで定められており、拘禁刑の対象になります。

確認の問いと理由技術を渡す前の問い

  1. 渡す技術は、規制の対象になる貨物の設計・製造・使用に係る技術か。

    技術の内容によって、許可の要否が変わる。技術の該非の確認は、貨物の該非の確認とは別に行う。

  2. 技術の提供は、紙や記録媒体で行うか、電子的に送るか。

    提供の方法により、条文の当てはめが変わる。電子データでの共有(共有フォルダ、クラウド)でも提供に当たりうる。

  3. 提供先は、相手の国にあるか、第三国にも再提供されるか。

    再提供の先まで契約書で限定しておかないと、規制の対象となる場所に技術が渡る可能性がある。

  4. 契約の目的は、設計の委託か、完成品の購入か。

    委託の場合は、技術を渡す取引が先に発生する。購入の場合は、貨物の輸出入の規制が中心になる。

支払・取引の規制:特定の国や者との取引が、許可制や禁止になることがある

貨物や技術の規制とは別に、外為法は、特定の国や者との支払や取引を、許可制または禁止とする仕組みを置いています。第16条は、主務大臣が、条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるときなどは、政令で定めるところにより、本邦から外国へ向けた支払などについて、許可を受ける義務を課することができると定めています。このほか、外為法には、許可を受けないで規制対象の支払等や取引を行った者に対し、期間を限って支払等や技術の提供・貨物の売買などの取引を禁止する措置(16条の2、25条の2)があり、これらの禁止に違反した場合の罰則も定められています(70条)。

これらの措置の内容は、国際情勢の変化に応じて変わります。特定の国・地域・者を対象とした措置は、政令や告示で追加・変更され、財務省や経済産業省が公表する資料に反映されます。このため、契約書を結んだ後で、相手が規制の対象に追加されることもあり得ます。契約書では、取引の相手が規制の対象となった場合に、取引を止め、契約を解除できる旨を書いておくことが、現実的な備えになります。

この問題は、代金と為替のページで見た支払の手続とつながっています。銀行等は、顧客の支払が許可を受ける義務が課された支払に当たらないこと、当たる場合には許可を受けていることを確認した後でなければ為替取引を行ってはならないとされています(外為法17条)。対象の相手への支払は、許可がなければ、銀行を通じても実行されません。契約書に、規制のために支払が実行できないときの取扱いを書いていなければ、遅延の責任をめぐる争いになります。

通関の手続と、輸出入してはならない貨物:関税法67条・69条の2・69条の11

外為法による許可・承認とは別に、貨物の輸出入には、関税法に基づく手続があります。関税法67条は、貨物を輸出し、または輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、品名、数量、価格その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならないと定めています。外為法の許可・承認を受けていても、通関の手続は別に必要で、通関の手続を終えても、外為法の許可が不要になるわけではありません。二つの手続は、別の制度です。

また、関税法は、輸出してはならない貨物(69条の2)と、輸入してはならない貨物(69条の11)を定めています。輸出してはならない貨物には、麻薬など、児童ポルノ、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権または育成者権を侵害する物品、不正競争防止法に定める一定の不正競争行為を組成する物品が含まれます。輸入してはならない貨物には、これらに加えて、拳銃などの銃砲、爆発物、火薬類、貨幣などの偽造品、公安または風俗を害すべき書籍・図画などが含まれます。税関長は、輸出されようとする貨物のうち一定のものを没収して廃棄することができるとされています(69条の2第2項)。

貨物の輸出の流れと、規制がかかる場所

1契約の前該非の確認と、取引相手の確認。許可が必要かどうか、相手が規制の対象でないかを確かめる
2契約の締結遵守条項、許可の取得の負担者、取引停止・解除、再輸出の制限を書く
3許可・承認の申請許可が必要な貨物・技術なら、経済産業大臣の許可を受ける(外為法48条・25条)
4通関税関長に申告し、検査を経て許可を受ける(関税法67条)
5支払銀行等が、支払が許可を受ける義務の対象でないかを確認する(外為法17条)。必要な報告を行う(同法55条)

この流れは規制の位置を示すための図で、実際の手続は貨物・技術と仕向地によって異なります。通関の実務と申請の書類は、このガイドの対象外です。

輸出者等遵守基準:業として輸出を行う者に課される自社の基準

外為法55条の10は、輸出者等遵守基準を定めています。経済産業大臣は、経済産業省令で、外為法25条1項に規定する取引または48条1項に規定する輸出を業として行う者が、輸出等を行うにあたって遵守すべき基準を定めなければならないとされ(同条1項)、輸出者等は、この基準に従って輸出等を行わなければならないとされています(同条4項)。基準は、提供しようとする特定技術や輸出しようとする貨物が、国際的な平和・安全の維持を特に妨げるおそれのある貨物・技術に該当するかどうかの確認に関する事項などを定めるものとされています(同条2項、3項)。具体的な基準は、「輸出者等遵守基準を定める省令」(平成21年経済産業省令第60号)が定めています。

この基準は、業として輸出等を行う者に課される自社の義務で、契約書で相手に転嫁することはできません。そのため、契約書の側からできることは、基準を守るために必要な情報(貨物の仕様、最終的な用途、最終的な需要者)を、相手から入手する義務を置き、確認が済むまでは出荷しないことを認める条項を置くことです。取引の相手から最終用途や需要者の情報が得られないとき、出荷を止められる権利が契約書に書いてあるかどうかは、遵守基準に従うための現実的な条件になります。

契約書に入れる条項:遵守・許可の負担・停止・解除・再輸出

ここまでの規制の構造を踏まえて、契約書に入れる条項を整理します。契約書の側の役割は、規制そのものを変えることではなく、規制に関する責任と手順を、当事者の間で分けておくことです。

書き方の例(一般的な例) 輸出入規制に関する条項

遵守条項

よくある書き方各当事者は、関係法令を遵守する。
整えた書き方各当事者は、本契約に基づく貨物の輸出入および技術の提供に関し、日本国および取引に関係する国の輸出入に関する法令(輸出管理に関する法令を含む。)を遵守する。

理由「関係法令」だけでは、何を守るのかが曖昧になる。輸出入管理の法令を含むことを明示し、双方の国の法令を対象にしておく。

許可の負担者

よくある書き方許可が必要なときは、必要な手続をとる。
整えた書き方貨物の輸出に必要な許可・承認は売り手が、貨物の輸入に必要な許可・承認は買い手が、自己の費用と責任で取得する。許可を取得できないときは、当事者は直ちに相手方に通知する。

理由誰が許可を取るのか、その費用は誰が負担するのか、取れなかったときに何をするのかを書いていないと、出荷が止まったときの責任が決まらない。

最終用途の確認

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方買い手は、売り手の求めに応じて、貨物の最終的な用途および最終的な需要者に関する情報を提供する。売り手は、情報が提供されない間、出荷を停止することができる。

理由遵守基準に従うために必要な情報を入手する根拠を、契約書に置く。出荷停止が債務不履行にならないことも、あわせて書く。

取引の停止・解除

よくある書き方法令違反があれば、契約を解除することができる。
整えた書き方一方の当事者が、輸出入に関する法令の違反のおそれがあると合理的に判断したとき、または相手方が輸出入に関する規制の対象となったときは、その当事者は、相手方に通知して、履行を停止し、または本契約を解除することができる。この場合において、停止または解除をした当事者は、これにより生じた相手方の損害について責任を負わない。

理由違反が確定する前でも、疑いの段階で止められるようにする。規制の対象に追加された場合も、解除事由に含める。

再輸出の制限

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方買い手は、売り手の事前の書面による同意なく、本契約に基づく貨物または技術を、第三国に再輸出または再提供してはならない。

理由買い手がさらに第三国に転売・再提供すると、規制の対象となる場所に貨物・技術が渡る可能性がある。再提供の先を限定する。

これらの条項は、一方的に売り手に有利になるように見えますが、実際には双方の利益になります。規制違反が起きると、売り手だけでなく、買い手の側も、貨物が差し押さえられたり、取引が止まったりします。契約書の中で規制への備えをしておくことは、両当事者が取引を続けるための条件になります。

これらの条項を契約書に置くときは、管轄・準拠法・仲裁の条項と合わせて整合を確認します。規制の違反や、規制による履行停止が争いになったとき、どこで、どの法で判断されるのかは、管轄の合意のページと仲裁条項のページで整理した条項の設計によります。

外国の法令を契約書で触れるとき:書き方の注意と、外国公務員への贈賄の禁止

契約書によっては、取引の相手の国や、第三国の法令(贈賄の禁止、制裁、輸出管理など)の遵守を求める条項が入ります。こうした条項を書くときには、三つの注意があります。第一に、特定の外国法の名前や条文を契約書に書くと、その法が契約上の義務の内容を決めることになり、改正のたびに義務の範囲が変わります。日本の側の担当者が、その法の内容を把握していない状態で義務を負うことになりかねません。「適用される法令」と書き、法令の内容の確認は、契約の前に別途行う、という整理が現実的です。

第二に、日本の側の法令として、不正競争防止法は、外国公務員等に対する不正の利益の供与等を禁止しています。同法18条1項は、何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ、もしくはさせないこと、またはその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ、もしくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、またはその申込みもしくは約束をしてはならない、と定めています。違反した場合は、10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する(同法21条4項4号)とされ、法人に対しては10億円以下の罰金刑が定められています(同法22条1項1号)。

この規定は、日本の事業者が、海外の代理店や仲介者を通じて取引を進める場面で、実務的な意味をもちます。仲介者に支払った報酬が、仲介者を通じて外国公務員等に渡れば、契約を結んだ日本の事業者が責任を問われる可能性があるためです。契約書には、相手が外国公務員等に不正の利益を供与しないことの表明、そのような疑いがあるときの報告義務、報酬の支払を実際の役務に見合うものに限る定め、違反があったときの解除を置くのが、一般的な備えです。

第三に、規制や制裁に関する表明を相手に求めるときは、相手の国の法令によって、そうした表明を出せない場合があることにも配慮します。表明を拒まれたときに、取引を進めるのか、止めるのかは、契約書を結ぶ前に決めておく項目です。

確認の問いと理由契約書の条項を作る前の問い

  1. 取引する貨物・技術は、許可・承認の対象になるか、誰が確かめるか。

    該非の確認の担当者と時期を決める。確認が済んでいない貨物を契約の対象に入れると、出荷時点で止まる。

  2. 最終用途と最終需要者を、相手から確認できるか。

    情報が得られなければ出荷を止められる条項を置く。確認の方法(誓約書、書面での回答)も決める。

  3. 相手が規制の対象に追加された場合の手順は書いてあるか。

    停止・解除の条項があるか、停止中の代金や在庫の扱いがどうなるかを確認する。

  4. 仲介者や代理店を使う場合、報酬の支払先と支払の根拠は確認できるか。

    外国公務員等への不正な利益の供与を防ぐため、仲介者の報酬の根拠を書面で残す。

規制は国際情勢の変化により更新されます。ここで整理した内容は、条文の構造と契約書への置き方です。個別の貨物・技術・相手の該当性は、所管官庁の公表資料で確認する必要があります。

起きがちなこと:規制への備えが契約書に書かれていないとき

起きがちなこと

  • 契約書に「関係法令を遵守する」と一文だけ書き、輸出の許可が必要な貨物と気づいたのが、出荷の直前だった。
  • 許可の取得を誰が行うかを決めておらず、売り手も買い手も相手が手続をしていると思い込み、出荷が止まった。
  • 設計図の電子データを海外の委託先に共有フォルダで渡し、あとから技術の提供の許可が必要な可能性に気づいた。
  • 契約後に相手が規制の対象に追加されたが、契約書に停止・解除の定めがなく、取引を続けるか止めるかの判断が後手に回った。
  • 相手が貨物をさらに第三国に再輸出していたが、契約書に再輸出の制限がなく、止めるための根拠がなかった。
  • 海外の仲介者に成功報酬を支払う契約を結んだが、報酬の根拠となる役務が確認できず、外国公務員等への不正な利益の供与の疑いを招いた。
  • 外国の法令の名前を契約書にそのまま書いたため、その法令が改正されたときに、自社の義務の範囲が把握できなくなった。

よくあるご質問

自社の貨物が輸出の許可の対象かどうかは、どうやって調べますか?

外為法48条1項と輸出貿易管理令の別表を踏まえて、貨物の仕様と仕向地の組合せで決まります。別表第一の1〜15の項(リスト規制)に当たらない貨物でも、16の項(キャッチオール規制)により、用途・需要者・経済産業大臣の通知によっては許可が必要になることがあります。経済産業省が公表する貨物・技術のリストや該非判定の資料で確認します。本ガイドは、個別の貨物の該当性を判断しません。契約書では、該非の確認を誰がいつ行うかと、許可を取る人を決めておきます。

設計図をメールで海外の委託先に送るだけでも、規制の対象になりますか?

外為法25条は、特定技術の提供を目的とする取引や、特定技術を内容とする情報の電気通信による送信を、政令で許可の対象にすることができると定めています。送る内容と送り先によっては、対象になる可能性があります。技術が規制の対象になるかどうかは、経済産業省の公表資料で確認が必要です。

許可が下りなくて出荷できなかった場合、契約はどうなりますか?

契約書に定めがなければ、売り手が債務を履行できなかったという扱いになるかどうかは、準拠法と契約の内容によります。契約書の側で、許可を取得できないときの通知、履行の停止、解除、損害賠償を負わない旨を書いておくと、争いを減らせます。金銭債務の不履行については、日本法では不可抗力を抗弁にできない(民法419条3項)点にも注意が必要です。

取引の相手が、規制の対象者だとあとで分かったらどうしますか?

外為法は、特定の国・地域・者への支払や取引を許可制または禁止とする措置をとることができ、違反には拘禁刑を含む罰則があります(外為法70条など)。契約書に、相手が規制の対象となったときに履行を停止し、解除できる条項を置いておくと、取引を止める根拠になります。対象かどうかは、財務省や経済産業省が公表する資料で確認が必要です。

海外の代理店への報酬は、どのような点に注意しますか?

不正競争防止法18条1項は、外国公務員等に対する不正の利益の供与等を禁止しており、違反には10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金などが定められています(同法21条4項4号)。仲介者への報酬が外国公務員等に渡る場合に問題になりうるため、契約書には、不正な利益を供与しないことの表明、報酬の根拠となる役務の確認、違反があったときの解除を置きます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関

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