国際的な管轄の合意の書き方:要件・専属か非専属か・保全処分

管轄の合意は、書面または電磁的記録で、一定の法律関係に基づく訴えについてしなければ効力がありません。専属か非専属かは文言で決まるので、書き方に意図を出します。

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「東京地方裁判所を管轄裁判所とする」と一行書いても、専属とは限りません。保全処分と消費者の特則も、あわせて決めておきます。

このページの要点

  • 管轄の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、書面(電磁的記録を含む)でしなければ効力を生じない(民事訴訟法3条の7)。
  • 専属か非専属かは条文が決めず、文言から解釈される。専属にするなら「専属的」「のみ」などの文言を入れる。
  • 相手国の裁判所を選ぶ前に、その国で合意が扱われるか、自国で戦える手段が残るかを確かめる。保全処分は合意の外に置く一文を入れる。
  • 「国際私法の規定による管轄変更の排除」のような意味の不明な文言は削る。消費者契約では合意の効力が制限される。

結論:管轄の合意は「書面」「一定の法律関係」「専属か非専属か」の三点で決まります

海外の相手との契約書に「東京地方裁判所を管轄裁判所とする」と一行書けば足りる、と思われがちですが、その一行が実際に何を決めているのかは、書き方によって変わります。日本の民事訴訟法は、当事者が合意によって、いずれの国の裁判所に訴えを提起できるかを定めることができるとしています(民事訴訟法第3条の7第1項)。この合意が効力を持つための要件と、効力の中身を、条文に沿って確かめるのが、このページの目的です。

要件は、実質的には二つです。合意が、一定の法律関係に基づく訴えに関するものであること、そして書面でされたことです(同条第2項)。内容を記録した電磁的記録でされた合意は、書面でされたものとみなされます(同条第3項)。効力の中身は、条文が決めていません。その裁判所だけが審理できる「専属的」な合意なのか、他の裁判所にも訴えられる余地を残す「非専属的」な合意なのかは、合意の文言から解釈されます。ここに、条項の書き方の勝負があります。

さらに、合意の効力には例外が三つあります。外国の裁判所を選んだ合意が、その裁判所が裁判権を行えないときに使えなくなる場合(第3条の7第4項)、消費者契約に関する合意が制限される場合(同条第5項)、労働関係に関する合意が制限される場合(同条第6項)です。このガイドは雇用・労務を扱わないため、最後の例外は条文の存在の紹介にとどめます。管轄の定めが全くないときの法律上の姿は、前のページ契約に管轄の定めがないときで扱っています。ここでは、定めを置くときの書き方に進みます。

条文管轄の合意に関する主な条文

  • 民事訴訟法3条の7第1項当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる
  • 同条第2項・第3項合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ効力を生じない。電磁的記録による合意は書面とみなす
  • 同条第4項外国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は、その裁判所が法律上または事実上裁判権を行えないときは、援用できない
  • 同条第5項将来の消費者契約に関する紛争についての合意は、一定の場合に限り効力を有する
  • 民事訴訟法3条の9(括弧書)日本の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意に基づく訴えには、特別の事情による却下の規定は適用されない
  • 民事訴訟法11条日本国内の裁判所のうち、どの裁判所にするかの合意(第一審に限る)。国際的な合意と併せて、日本国内の裁判所を指定するときに働く

ここでの記述は、条文の要旨です。

合意の要件:「一定の法律関係」と「書面」を満たす書き方

「一定の法律関係に基づく訴え」とは、合意の対象となる紛争の範囲が、ある法律関係に限定されていなければならない、という意味です。当事者間のすべての紛争について、あらゆる裁判所を事前に決めておくような、範囲の限定のない合意は、効力が認められません。契約書の条項であれば、「本契約およびこれに関連する一切の紛争」「本契約に基づく、または本契約に関連して生じる一切の請求」といった書き方が、通常は「一定の法律関係」の要件を満たすと考えられます。基本契約と個別契約に分かれているときは、基本契約の管轄の条項が、個別契約に基づく紛争にも及ぶことを書いておきます。

範囲の書き方に注意が必要なのは、契約に直接関係しない紛争(たとえば、契約以外の不法行為に基づく請求や、取引と無関係の貸し借りの紛争)まで、「当事者間の一切の紛争」と広げてしまう場合です。広げすぎると、合意の効力が全体として争われるおそれがあります。契約に関連する紛争に限定して書いておけば、要件を安全に満たせます。

「書面」は、署名した契約書が代表的ですが、注文書の裏面に印刷された約款や、メールのやりとりで管轄の条項に合意した場合などは、書面の要件を満たすのか、満たさないのかが争点になりえます。海外取引では、基本契約に管轄の条項を書き、個別の注文書はその基本契約に従うと書いておくと、書面の要件が争われにくくなります。電磁的記録による合意は書面とみなされますから(第3条の7第3項)、電子契約サービスでの合意や、電子署名のあるPDFでの合意も、要件を満たします(電子署名の扱いは海外の相手との契約の締結で扱います)。

条項例管轄の合意(専属の例と非専属の例)

  1. 【専属の場合】甲および乙は、本契約および本契約に関連して生じる一切の紛争(本契約に基づく個別契約に関する紛争を含む。)について、日本国の○○(地名)地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
  2. 【専属の場合】前項の定めは、日本の裁判所のみが本契約に関する訴えについて管轄権を有することを意味する。甲および乙は、他のいずれの国の裁判所にも訴えを提起しない。
  3. 【非専属の場合】甲および乙は、本契約および本契約に関連して生じる一切の紛争について、日本国の○○(地名)地方裁判所を第一審の非専属的合意管轄裁判所とする。この定めは、法律上管轄権を有する他の国または地域の裁判所に訴えを提起することを妨げない。
  4. 前二項の定めにかかわらず、各当事者は、仮差押えまたは仮処分その他の保全処分の申立てを、その対象となる財産の所在地または相手方の所在地の裁判所にすることができる。

専属とするか非専属とするかは、取引の規模、相手の財産のある場所、判決の執行の見通しで決めます。最後の項は、保全処分を管轄合意の外に置く書き方です(後の節で説明します)。条項は書き方の構造を示す例で、特定の契約の引用ではありません。

専属的合意と非専属的合意:書き方で効果が決まる

管轄の合意には、大きく二種類あります。専属的合意は、合意した裁判所だけが審理できる(他の裁判所には訴えを起こせない)とする合意で、非専属的合意(付加的合意)は、合意した裁判所にも訴えを起こせるが、法律上他の裁判所に管轄が認められる場合には、そこにも訴えを起こせるとする合意です。民事訴訟法第3条の7は、どちらの合意も認めていますが、どちらにあたるかを決める規定を置いていません。合意の文言から、当事者の意思を解釈して判断されます。

そこで、書き方が問題になります。「○○地方裁判所を管轄裁判所とする」とだけ書いた条項は、専属のつもりでも、非専属と解釈される余地があります。専属にしたいなら、「専属的合意管轄」「のみ」「他のいずれの裁判所にも訴えを提起しない」といった文言を加えます。非専属にしたいなら、「その他の法律上の管轄権を有する裁判所に訴えを提起することを妨げない」と書きます。どちらかは、意図に応じて選びます。

管轄の合意の四つの設計と、それぞれの向き不向き

自国の裁判所の専属

自国の裁判所だけに決める

  • 自国で審理でき、言語・手続が分かりやすい
  • 特別の事情による却下を受けにくい(3条の9の括弧書)
  • 勝訴しても、相手の財産のある国で認められなければ回収できない
  • 相手が受け入れにくく、交渉の争点になりやすい

相手国の裁判所の専属

相手の国の裁判所だけに決める

  • 相手の財産のある国で審理するため、判決の執行は進めやすい
  • 自国から離れた外国で訴訟をする負担が大きい(言語、費用、現地の手続)
  • その国の裁判所が管轄を認めるかどうかは、その国の法による

被告の所在地の裁判所

訴えられる側の国の裁判所に決める

  • どちらも相手の国で訴えられる負担を負わない公平な形に見える
  • 財産のない側の国で判決を取っても回収できない、という場面が起こりうる
  • どちらが原告になるかで、実際に戦う場所が変わる

非専属(併存)

合意した裁判所にも訴えられるとする

  • 他の法律上の管轄を排除しないため、柔軟
  • どの裁判所で争うかを事前に決めきれない
  • 複数の国で同時に訴訟になる(並行訴訟)おそれが残る

どの設計にも利点と負担があります。決める際の軸は、紛争が起きたときに誰が原告になりやすいか、相手の財産がどの国にあるか、判決を執行する国はどこか、の三つです。判決の執行については勝っても回収できないことを防ぐで扱います。

専属か非専属かを選ぶとき、特別の事情による却下の規定との関係も、見落とされがちです。民事訴訟法第3条の9は、日本の裁判所に管轄があるときでも、特別の事情があれば訴えを却下できるとしますが、日本の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意に基づく訴えは、この規定の対象から除かれています。つまり、日本の裁判所の専属的合意があれば、日本で訴えを起こしたときに、証拠が海外にある、相手が遠方にいるといった事情を理由に却下される心配が少なくなります。一方、非専属的合意や、日本の裁判所以外の裁判所を含む合意では、この除外が働かないため、特別の事情による却下の余地が残ります。

相手国の裁判所を選ぶとき:その国で審理できるか、自国で戦えるか

相手が強い立場にあり、相手国の裁判所を専属とする合意を求めてくることは、海外取引では珍しくありません。この合意を受け入れるかどうかは、一律に判断できませんが、次の三点を確かめます。

一つ目は、その裁判所が、合意に基づいて審理を引き受けるかです。民事訴訟法第3条の7第4項は、外国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は、その裁判所が法律上または事実上裁判権を行うことができないときは、援用できないとしています。相手国の裁判所が、その国の法のもとで、当事者の合意だけで管轄を認めるのか、一定の関連性を要求するのかは、その国の法によります。このガイドでは外国法の内容は判断しません。外国の裁判所を選ぶときは、その国で合意が有効に扱われるかを、その国の法令で確認する必要があります。

二つ目は、自国で戦える手段が残るかです。相手国の専属合意を受け入れると、代金の不払いや品質の問題について、日本の会社が日本の裁判所で相手に訴えを起こす道が閉ざされます。他方、相手が日本で財産を持っているなら、日本の裁判所で保全処分や執行ができることが、交渉上の強みになります。専属合意でも、保全処分や執行は別だという書き方を併せて入れておくことが重要です(次の節)。

三つ目は、自社が訴えられる側になったときの負担です。相手国の専属合意では、日本の会社が被告となるときも、相手国で応訴することになります。その国での訴訟の言語、費用、期間を事前に見積もっておかないと、紛争が起きたあとに「争わずに和解する」以外の選択肢が現実的に残らなくなります。この負担が大きいと判断するなら、相手国の裁判所ではなく、第三国での仲裁(仲裁条項の書き方)を選ぶ方法もあります。

また、相手国の裁判所で出た判決を、日本にある財産に対して執行したいとき(相手が日本国内に財産をもつ場合など)には、外国裁判所の確定判決が日本で効力をもつ要件(民事訴訟法第118条)を満たす必要があります。要件の一つに、法令または条約により外国裁判所の裁判権が認められることがあります。逆に、日本の判決が外国で効力をもつかは、その外国の法によります。

片方だけに選択権を与える書き方と、過剰な文言

実務の契約書には、管轄の合意の標準的な書き方から外れた文言が、しばしば入っています。代表的なものを三つ取り上げ、何が問題かを確かめます。

書き方の例(一般的な例) 管轄の合意でよく見る書き方と、整えた書き方

片方だけが選べる

よくある書き方甲は、甲の選択する裁判所に訴えを提起できる。乙は、甲の本店所在地を管轄する裁判所にのみ訴えを提起できる。
整えた書き方紛争が生じたときは、原告となる当事者は、被告の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起する。

理由一方にだけ選択権を与える書き方は、合意の範囲が明確でなく、争いのもとになる。被告地主義のように、どちらにも同じ基準が働く形が、解釈の幅を減らす。

国際私法の排除

よくある書き方本契約に関する管轄は、国際私法の規定による管轄の変更の可能性を排除して、○○地方裁判所とする。
整えた書き方本契約および本契約に関連して生じる一切の紛争について、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

理由管轄合意の効力は、民事訴訟法第3条の7の要件で決まる。「国際私法の規定による管轄変更を排除する」という文言は、何を排除する趣旨か不明確で、効果が読み取れない。整えた書き方に絞る。

管轄と準拠法の混在

よくある書き方本契約の準拠法および管轄裁判所は、日本法および○○地方裁判所とする。
整えた書き方第○条(準拠法)本契約の成立、効力および解釈は、日本法による。第○条(管轄)本契約に関する紛争については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

理由準拠法と管轄は別の問い。別の条に分けて書き、それぞれの要件に合わせて文言を整える。

第一審の記載

よくある書き方○○地方裁判所を管轄裁判所とする。
整えた書き方○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

理由国内の裁判所を指定する合意は、第一審に限られる(民事訴訟法第11条第1項)。第一審と明記して、控訴審以降は法律に従うと読ませる。

三番目の「国際私法の排除」は、準拠法の条項で「国際私法の原則の適用を排除する」と書く例と一緒に見られる文言です。管轄の条項では、何を排除したいのかが曖昧になります。この種の文言は、書いてある場合に効果を狙ったものか、雛形に残った表現かを見極め、効果があるか分からない文言は、削るか、趣旨を具体的な文言に置き換えます。意味の分からない文言を残すと、解釈の争いになったときに、むしろ不利に働くことがあります。

「一方だけが選べる」書き方(非対称な管轄の合意)についても、民事訴訟法第3条の7は、禁止していません。しかし、選択権を行使する前提の事実(選択の時期、選択できる裁判所の範囲)を書いておかなければ、合意の範囲が曖昧になります。また、取引上の立場が弱いために受け入れる場合でも、自社が選択される側になったときの負担を見積もる必要があります。

保全処分を、管轄の合意の外に置く

保全処分とは、判決が出るまでの間に財産を隠されたり処分されたりすることを防ぐための、仮差押えや仮処分などの手続です。民事保全法は、保全命令の申立てについて、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、または仮に差し押さえるべき物もしくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができるとしています(民事保全法第11条)。つまり、相手の財産が日本国内にあれば、日本の裁判所に保全命令を申し立てる余地があります。

ところが、契約書に「外国の裁判所を専属的管轄とする」と書いてあると、保全処分の申立てまでがその合意に含まれるのか、含まれないのかが争点になるおそれがあります。保全処分は、速さが命です。申立ての段階で、管轄の合意の解釈を争っていては、財産が移されてしまいます。そこで、管轄の合意の条項に、「前項の定めにかかわらず、各当事者は、保全処分の申立てを、その対象となる財産の所在地の裁判所にすることができる」といった一文を入れておきます。この一文は、本案の訴えの管轄を動かすものではなく、保全処分だけを別扱いにするものです。仲裁にする場合の保全処分の扱い(仲裁法第15条)は、仲裁条項の書き方で扱います。

消費者との間の特則と、契約前の確認

相手が消費者であるときは、管轄の合意の効力が制限されます。将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする合意は、次の二つの場合に限って効力を有します(民事訴訟法第3条の7第5項)。一つは、消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起できる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなされる)であるとき。もう一つは、消費者が、合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、または事業者が日本もしくは外国の裁判所に訴えを提起した場合に消費者がその合意を援用したときです。要するに、事業者が自国の裁判所を専属とする条項を消費者に使っても、消費者が住所地の裁判所に訴えを起こす道は残る、という構造です。

事業者どうしの取引のつもりで管轄の条項を書いたが、実は相手が消費者に当たった、という場合は、この特則が働きます。事業のために契約をする個人は事業者に当たり、事業とは関係なく契約する個人は消費者に当たるという区別は、海外取引の契約書で決めることで整理しています。

確認の問いと理由管轄の合意を書く前に確かめる問いと理由

  1. 相手の財産は、どの国にあるか。その国で、合意した裁判所の判決は認められるか。

    管轄の合意は、判決を取るまでの話。回収できるかは、相手の財産のある国の法による。

  2. 専属にするか、非専属にするか。文言は、その意図と合っているか。

    「管轄裁判所とする」とだけでは、専属か非専属か読み分けられない。

  3. 対象とする紛争の範囲は、契約に関連する紛争に限られているか。

    範囲が広すぎると、合意の効力が争われる。

  4. 管轄の合意は、書面または電磁的記録になっているか。基本契約と個別契約で、条項の関係は明確か。

    書面でなければ効力を生じない。個別の注文書だけに頼ると、書面の要件で争いになる。

  5. 保全処分を管轄の合意の外に置くことを書いているか。

    財産の所在地で、速やかに保全の申立てをする余地を残す。

  6. 相手が消費者に当たる可能性はないか。

    消費者契約では、管轄の合意の効力が制限される。

  7. 準拠法と管轄を、別の条に分けて、別の問いとして書いているか。

    二つは別の問い。混在した条項は、どちらの趣旨か分からなくなる。

起きがちなこと

起きがちなこと

  • 「○○地方裁判所を管轄裁判所とする」とだけ書き、専属のつもりだったが、相手が自国の裁判所に訴えを起こした。合意は非専属と解釈されうる文言だった。
  • 管轄の合意の対象を「当事者間の一切の紛争」と広げすぎ、一定の法律関係に基づく訴えという要件が満たされるのか、争いになった。
  • 個別の注文書の裏面にある約款に管轄の条項があるとして、書面の要件で争いになった。基本契約に条項がなく、注文書の書面性しか根拠がなかった。
  • 相手国の専属合意を受け入れたが、その国の裁判所が、合意だけで管轄を認めるのかを確かめていなかった。
  • 専属の合意があるため、相手の日本国内の財産に対する保全処分の申立てが、合意違反だと争われた。保全処分を管轄の合意の外に置く一文がなかった。
  • 「国際私法の規定による管轄変更を排除する」といった文言を雛形からそのまま残した。何を排除するのか分からず、解釈の争いの種になった。
  • 管轄と準拠法を一文で書いたため、準拠法の部分を変えたら、管轄の部分も一緒に変わったかのような読みが生じた。
  • 事業者用の管轄条項を、個人の顧客にも使った。顧客が消費者に当たり、合意の効力が制限された。

管轄の合意を書いたあとは、その裁判所で出た判決が、相手の財産に対して使えるかを確かめます(勝っても回収できないことを防ぐ)。また、裁判ではなく仲裁にするなら、仲裁条項の書き方に進みます。管轄の条項と準拠法の条項は、別々の問いとして書くので、準拠法は準拠法の選び方で確かめてください。

よくあるご質問

「○○地方裁判所を管轄裁判所とする」と書けば、専属の合意になりますか?

それだけでは、専属か非専属かが一義的に読めません。民事訴訟法第3条の7は、管轄の合意を認めていますが、専属か非専属かを決める規定は置いておらず、合意の文言から解釈されます。専属にするなら「専属的合意管轄」「のみ」「他のいずれの裁判所にも訴えを提起しない」といった文言を加え、非専属にするなら「その他の法律上の管轄を妨げない」と書くなど、意図を文言に出します。

管轄の合意は、メールのやりとりや注文書の裏面でも有効ですか?

管轄の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ書面でしなければ効力を生じません(民事訴訟法第3条の7第2項)。電磁的記録によってされた合意は書面とみなされます(同条第3項)。メールや約款が書面の要件を満たすかは、内容と経緯により争いになりえます。争われにくくするには、署名された基本契約(または電子署名のある電磁的記録)に、管轄の条項を書きます。

相手国の裁判所を専属的管轄とする合意を受け入れるとき、何を確認しますか?

その国の裁判所が、合意に基づいて審理を引き受けるかを、その国の法令で確認します。外国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は、その裁判所が法律上または事実上裁判権を行えないときは援用できません(民事訴訟法第3条の7第4項)。あわせて、自国で保全処分を申し立てる余地を残すか、相手国での訴訟の言語・費用・期間を見積もったかを確かめます。

管轄の合意があっても、保全処分は日本の裁判所に申し立てられますか?

民事保全法第11条は、日本の裁判所に本案の訴えを提起できるとき、または仮に差し押さえるべき物もしくは係争物が日本国内にあるときに限り、保全命令の申立てができるとしています。ただし、外国の裁判所の専属的合意があると、保全処分も含まれるのかが争点になるおそれがあります。管轄の合意の条項に、保全処分は合意の外に置く旨の一文を入れておくと、争いを避けられます。

相手が個人のとき、事業者用の管轄の条項はそのまま使えますか?

相手が消費者に当たる場合は、そのまま使えません。将来の消費者契約に関する紛争を対象とする管轄の合意は、消費者の契約時の住所地の国の裁判所を指定する合意などの場合に限って効力を有します(民事訴訟法第3条の7第5項)。事業のために契約をする個人は事業者に当たるので、契約の目的と立場を、契約の前に確かめます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関

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