このページの要点
- 署名者の権限は肩書だけで判断せず、権限を裏づける資料の提出と、権限を保証する条項の二本立てで確かめる。
- 電子署名法3条の推定と、紙の署名・押印の推定(民事訴訟法228条4項)は日本の裁判での話。相手の国の扱いは別で、方式は契約書に書く。
- 契約は承諾の意思表示が到達した時に成立する(民法522条1項、97条1項)。最後の署名の日を発効日と定義し、署名日を併記する。
- 通知条項には言語・宛先・方法・到達したとみなす時点を書く。重要な通知は記録の残る方法を併用し、複数言語版は署名する版と優先する版を決める。
結論:署名の前に確かめるのは、署名する人、署名の方式、成立の時、通知の宛先、言語版の五つ
契約書の内容が固まっても、海外の相手との契約には、署名の段階で国内取引にはない確認事項が残ります。署名欄に名前を書く人は、その会社を代表して契約を結ぶ権限をもっているのか。紙に署名してもらうのか、電子署名で済ませるのか、両方が混ざってもよいのか。署名の日付が両者でずれたら契約はいつ成立したことになるのか。通知はどの言語で、どの宛先に、いつ届いたことになるのか。日本語版と英語版の両方があるとき、どちらに署名するのか。条文を詰めた契約書でも、この五つが曖昧だと、いざという場面で「そもそも契約が有効に成立したのか」という入口の争いになります。
このページでは、締結の段階に絞って、確認の順番を整理します。管轄や準拠法の条項そのものの書き方は管轄の合意のページと準拠法のページに、英文の契約書の読み方は英文契約書のページに分けています。
- 署名者の権限は、契約書の末尾の肩書だけで判断せず、権限を裏づける資料(役職を示す書類、委任状に相当する書面など)を提出してもらう定めを置く。
- 電子署名の法的な位置づけは、日本の電子署名法3条で見られるが、相手の国でどう扱われるかは別の問題。双方の方式を契約書に書いておく。
- 契約の成立は、一般に申込みに対する承諾の意思表示が相手に到達した時と考える。署名日が両者でずれる場合は、効力発生日を契約書に明記する。
- 通知条項には、言語、宛先、方法、到達したとみなす時点を書く。電子メールだけで足りるか、国際宅配便なども併用するかを決める。
- 複数の言語版があるときは、署名する版を決め、優先する版を書く。翻訳版は参考であることを明記する方法がある。
署名者の権限を確かめる:肩書の記載と、権限の裏づけは別のもの
国内の取引でも、署名者が会社を代表できるのかは確かめる項目ですが、日本の会社なら、登記事項証明書で代表者を確認できる、という共通の足場があります。海外の会社では、会社の代表のしくみや、それを証明する書類が国ごとに違います。取締役の一人が単独で会社を代表できる国もあれば、複数人の署名が必要な国もあります。このため、署名欄に「代表者」「社長」と書いてあっても、それだけでは権限があるとは言い切れません。
日本法が適用される場面を前提に考えると、代理人がその権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接に効力を生じます(民法99条1項)。逆に、代理権をもたない人が他人の代理人としてした契約は、本人が追認をしなければ、本人に対して効力を生じません(同法113条1項)。ただし、他人に代理権を与えた旨を第三者に表示した人は、その代理権の範囲内の行為について責任を負う場合があります(同法109条1項)。相手が外国の会社である場合に、署名者の権限の有無や会社の代表のしくみがどの国の法で判断されるかは、その会社が設立された国などの事情によるため、本ガイドでは判断しません。
実務では、契約書の中で次のような手当てをします。権限の確認は、条文で「保証」させる方法と、署名前に資料を受け取る方法の二本立てにするのが一般的です。
書き方の例(一般的な例) 署名者の権限に関する条項
権限の表明
理由「権限がある」とだけ書くと、何を完了したことを指すのかが読み取れない。社内手続の完了と署名者の権限を分けて書くと、後で確かめる対象がはっきりする。
資料の提出
理由署名後に権限の疑いが出たとき、署名前に何を受け取っていたかが争点になる。提出を義務づけ、写しを保管しておくと、確認を尽くしたことを示せる。
代理人による署名
理由代理人が署名する場面では、本人の権限の授与そのものが争点になる。委任の範囲(この契約に限るのか、金額の上限はあるか)も書面に書いてもらう。
権限を確かめるための資料は、相手の国によって呼び名も形式も違います。日本語で「登記事項証明書」に当たるものを求めるときは、名称にこだわらず、「会社が存在し、署名者が代表者または代理人であることを示す公的な書類」というように機能で書くと、相手が出しやすくなります。外国語の書類を受け取ったときの翻訳の扱いは、受け取る側で内容を確かめられる形にしておくことが前提です。
確認の問いと理由署名の前に確かめる問い
署名者はその会社の代表者か、代理人か。
代表者なら、その地位を示す書類を、代理人なら、権限を授与した書面を受け取る必要がある。立場によって求める書類が違う。
社内の決議や承認が必要な取引か。
取引の金額や種類によっては、会社内部で取締役会などの承認が必要なことがある。契約書で承認の完了を表明させておくと、後の争いに備えられる。
契約を結ぶ主体は、取引の実際の担当者の会社と同じか。
子会社や関連会社が実際の窓口だと、契約の当事者を取り違えやすい。契約書の当事者欄の正式名称と所在地を、取引に関わる書類と一致させる。
日本の側の署名者の権限は整っているか。
自社についても、署名者が代表権をもつか、権限を委ねる書面があるかを、同じ基準で確認しておく。相手に求めることは、自社も満たしておく。
相手の国の会社法令の内容は判断しません。確認の項目と、契約書への書き方を整理するにとどめます。
署名の方式:紙の署名、電子署名、両方の混在をどう書くか
契約の方式について、日本の民法は、契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めています(民法522条2項)。口頭でも契約は成立します。それでも契約書を作って署名するのは、契約の内容と成立を証拠として残すためです。海外の相手との間では、紙の書面に署名して郵送し合う方法、署名したものをPDFにして電子メールで送る方法、電子署名のサービスを使う方法が混在しやすく、どの方法でも有効になるのか、証拠としてどう扱われるのかを整理しておく必要があります。
日本の電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)は、「電子署名」を、電磁的記録に記録された情報について行われる措置で、その情報が措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること、および改変が行われていないかどうかを確認できるものであること、の二つの要件を満たすものと定義しています(同法2条1項)。そして、情報を表すために作られた電磁的記録は、本人による電子署名(これを行うために必要な符号および物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定されます(同法3条)。
紙の文書にも似た仕組みがあります。民事訴訟法228条4項は、私文書は、本人または代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定すると定めています。つまり、日本の裁判で契約書を証拠に出すとき、署名や押印がある紙の契約書と、本人による電子署名が付された電磁的記録には、どちらも「本人が作成したもの」と推定される仕組みがあります。ただし、これは日本の裁判所で日本の法令に基づいて証拠を評価する場面の話です。相手の国の裁判所や仲裁廷が、同じ扱いをするとは限りません。
署名の三つの方式の比較
紙に署名して交換
昔からある方式
- 署名のある書面を郵送または宅配便で交換する。時間と送料がかかる。
- 同じ内容の書面を二通作り、各自が一通ずつ保管する書き方が基本。
- 署名のあるページが差し替えられていないかを確かめにくい。
署名のPDFを電子メールで送る
簡便だが証拠力に差が出る
- 手元で署名した書面をスキャンして送る。手軽で、広く使われている。
- 原本の扱い(PDFを正本とするか、紙を後日交換するか)を決めておく必要がある。
- メールの送受信の記録とあわせて保管する。
電子署名サービス
改変の確認ができる
- 電子署名で、署名者と改変の有無を確認できる記録が残る。
- 相手の国で、その署名方式が法的に通用するかは、その国の法令による。
- 署名者の本人確認の方法(メールアドレスの確認か、より厳格な方法か)を確認する。
電子署名サービスによって、署名の仕組みや本人確認の程度が違います。電子署名法3条の推定が働くかどうかは、署名の方法が、本人だけが行うことができるものかどうかなどによります。所管官庁が電子署名法についてのQ&Aを公表しているため、個別のサービスの性質は、その資料と事業者の説明で確かめる必要があります。
契約書の側では、方式を一つに絞らず、「紙でも電子でもよい」と書く場合があります。その場合の条項の書き方は、次のようになります。
条項例署名の方式(一般的な例)
- 本契約は、各当事者が署名した書面、または電磁的記録に電子署名を付したものを、それぞれ原本とする。
- 各当事者は、署名した書面をスキャンして電子メールで送付する方法によって署名を交換することができる。この場合において、署名した書面の電子的な写しは、原本と同一の効力を有するものとし、各当事者は、相手方の求めがあるときは、速やかに原本を送付する。
- 本契約は、複数の通に分けて署名することができ、すべての通を合わせて一つの契約書とする。
原本を後日交換する義務を置くか、電子的な写しのみで足りるとするかは、取引の規模と、相手の国で署名をどう扱うかによって決めます。署名を複数の通に分ける定めは、署名者が別の場所にいるときに使われます。
契約書の方式が問題になる場面を、国際私法の側から見ておきます。法の適用に関する通則法10条は、法律行為の方式について、その成立について適用すべき法によるとし(1項)、行為地法に適合する方式も有効とします(2項)。ただし、法を異にする地に在る者の間で締結された契約の方式については、2項・3項は適用されず、申込みの通知を発した地の法または承諾の通知を発した地の法のいずれかに適合する方式であれば有効とされます(4項)。つまり、日本の会社と外国の会社が、それぞれの国から署名を交わして契約を結ぶとき、契約の方式は、複数の法のうちのどれかに適合していれば有効とされる余地があります。方式を満たしているかは、書面や電子署名の要否を特別に定める法令がある場合に問題になります。
契約はいつ成立するか:署名日、到達、効力発生日を分けて考える
契約書の最後に書く日付は、署名した日なのか、契約の効力が始まる日なのか、実は読み方が二つあります。海外の相手との間では、両者が別の日に、別の場所で署名することが多く、この問いが現実の争点になりやすくなります。まず、日本法が成立の準拠法となる場面での考え方を整理します。
条文契約の成立に関係する条文(日本の民法)
- 民法522条1項契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して、相手方が承諾をしたときに成立する
- 民法522条2項契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない
- 民法97条1項意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる
- 民法97条2項相手方が正当な理由なく通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす
- 民法523条承諾の期間を定めてした申込みは、撤回できない。ただし、申込者が撤回する権利を留保したときは別。期間内に承諾の通知を受けなかったときは、申込みは効力を失う
日本法が契約の成立に適用される場合の条文です。成立の準拠法が外国法とされる場合は、その法によります。
これらの条文を契約の締結に当てはめると、次のようになります。一方が署名した契約書を相手に送るのが「申込み」、相手が署名して返送するのが「承諾」と見られる場面が典型です。承諾の意思表示が申込者に到達した時に、契約が成立します。そのため、片方が署名して送った時点では契約は成立しておらず、相手が署名して、その署名済みの書面が最初の署名者に届いた時が成立の時期になります。署名日が両者でずれていても、成立は到達の時です。
問題は、契約書に書いた日付と、この成立の時が一致しないときです。たとえば、契約書の日付を「署名の前日」にそろえて書いたり、最後の署名が済んだ後で「1か月前に遡って効力を生ずる」ことにしたりすると、その間に生じた出来事(納品、支払、規制の変更)の扱いが混乱します。契約書では、署名日と効力発生日を別の事項として書き分けるのが整った書き方です。
書き方の例(一般的な例) 契約の日付と効力発生日
日付の書き方
理由日付を一つに決め打ちすると、実際の署名日と食い違う。発効日を「最後の署名の日」と定義し、署名日を併記させると、成立の時期を後から確かめられる。
先行して始めた作業
理由契約の署名が遅れても、準備や納品が先に始まることがある。その間の作業も契約の対象に含めるかを書いておく。
申込みの有効期間
理由承諾の期間を定めた申込みは、期間内に承諾の通知を受けなければ失効する(民法523条)。期限を書いておくと、いつまでに署名が必要かを相手に伝えられる。
電子署名サービスを使うと、署名の日時が記録に残るため、署名日の食い違いは小さくなります。しかし、記録に残る日時は、サービスのサーバーの時刻であることが多く、署名者のいる国の日付とずれることもあります。契約書では、時刻の基準(どの国の標準時か)まで書くかどうかは、取引の規模で決めます。納期や支払期限が数日単位で重要な取引なら、日付の基準を書いておく意味があります。
通知条項:言語、宛先、方法、到達の時を決める
契約を結んだ後に重要になるのが、通知です。納期の変更、解除、契約の更新の拒絶、代金の請求、品質の苦情。契約書の多くの条項は、「通知」を条件にして効力が決まります。国内の取引なら、郵便か電子メールで足りると考えがちですが、海外の相手との間では、相手が通知を受け取っていないと主張する余地が大きくなります。時差、迷惑メールの振り分け、担当者の退職、国際郵便の遅れ、宛先の記載の誤り。通知条項を丁寧に書いておく理由は、後で「届いた」「届いていない」の争いを減らすことにあります。
通知条項に書く項目
| 項目 | 決めること | 書き方の工夫 |
|---|---|---|
| 言語 | 通知を書く言語 | 契約書の正文と同じ言語にそろえるか、複数言語の通知を認めるかを決める。通知の言語が決まっていないと、相手が読めなかったと主張する余地が残る。 |
| 宛先 | 通知の送り先 | 正式名称、住所、担当部署または担当者、電子メールアドレスを書く。変更したときの通知の方法も書く。 |
| 方法 | 郵便、宅配便、電子メール、システム内の通知 | 重要な通知(解除、損害賠償の請求)は、記録が残る方法に限る、または電子メールと宅配便を併用する、といった段階をつける。 |
| 到達の時 | 通知が届いたとみなす時 | 発信した時か、相手が受け取った時か、宅配便の配達記録の日か、電子メールなら送信から一定の時間後か。基準を書く。 |
| 変更 | 住所・担当者・メールアドレスが変わったとき | 変更の通知がない間は、従前の宛先への通知を有効とする定めを置く。 |
日本法の考え方では、意思表示は通知が相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。相手が正当な理由なく通知の到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(同条2項)。この原則を契約書の中で具体的な基準にしたものが、次のような到達の定めです。
条項例通知(一般的な例)
- 本契約に基づく通知は、書面(電子メールを含む。)により、相手方が本契約の末尾に記載した宛先に対して行う。通知の言語は英語または日本語とする。
- 通知は、次の各号の時に到達したものとみなす。①宅配便その他の配達記録の残る方法による場合は、配達記録に記録された配達の日。②電子メールによる場合は、送信した日の翌営業日。ただし、送信者が送信不能の通知を受けたときは、到達したものとみなさない。
- 解除、更新の拒絶および損害賠償の請求に関する通知は、前項の電子メールによるほか、配達記録の残る方法による通知を併せて行う。
- 各当事者は、通知の宛先を変更するときは、変更の日の一定の日数前までに、相手方に通知する。
営業日の基準は、どちらの国の暦によるかを決めておく必要があります。祝日や休業日が国ごとに違うため、「受信者の所在地の営業日」とするかなど、基準を書き分けます。
電子メールで足りるかどうかは、取引の重要度に応じて分けます。日常の注文や納期の連絡は電子メールで足りるとし、解除や損害賠償の請求のような重い通知は、記録の残る別の方法を併用させる、という二段構えが典型です。また、通知を電子メールで受け取る担当者のアドレスが、個人のアドレスだと、担当者が替わったときに通知が届かなくなります。部署の共有アドレスを宛先にしておく方法があります。
契約書の通知の定めと、後のトラブルになったときの対応は、つながっています。催告や解除の通知を出す場面では、契約書の通知条項に従って出したかどうかが、効力の判断の入口になるためです。
複数の言語版があるとき:署名する版と、優先する版を決める
日本語版と英語版を両方作るとき、どちらの版に署名するのか、両方に署名するのか、片方は参考訳にとどめるのかは、早い段階で決めておく項目です。英文契約書のページでは、複数の言語版のうちどれを優先するかという条項の書き方を扱いました。このページでは、署名の実務に絞ります。
署名の対象の決め方
正文を一つに決める
署名するのは一つの言語版だけ
- 署名する版が一つなので、条文の食い違いが生じない。
- 他の言語版は、参考訳として配布し、署名はしない。
- 参考訳に誤りがあっても、正文が優先すると書いておく。
両方に署名する
二つの言語版が、どちらも正文
- 両方の版に署名するため、相手に読みやすい。
- 二つの版が食い違うと、どちらが優先するかという争いになる。
- 優先する版を、契約書の中で書いておく。
翻訳を作るときは、日本語版と英語版の対応表を作り、条番号がずれないようにしておくと、後で見比べやすくなります。
署名する版の取り違えを防ぐために、実務では、署名ページに契約書の題名と版(言語・日付・版数)を書いておきます。ひとつの契約書の署名ページだけが、別の版の本文につけられて回覧される、という事故は、電子メールでの交換が多い取引で起きやすいためです。署名ページと本文が一体の書面であることを示すために、各ページの余白にページ番号と版数を記載する方法もあります。
電子署名サービスを使う場合は、署名の対象となるファイルが一つに確定した状態で署名が行われます。この場合、署名後に本文を修正すると、署名が無効になるか、署名のやり直しが必要になります。署名の直前に条文の細かな直しが入るときは、最終版のファイルの名前に版数を付け、署名者全員が同じファイルに署名したことを、記録で確かめられるようにします。
変更・追加の合意の方式:契約書を直すときの手順も契約書に書く
契約書を結んだ後に、価格や納期を変えたくなることがあります。海外の相手との間では、電子メールのやり取りだけで条件が変わっていき、気づいたときには契約書と実際の条件がずれている、ということが起きやすくなります。契約書には、変更の方式を書いておきます。
書き方の例(一般的な例) 変更の方式
変更の定め
理由「書面」に電子メールが含まれるかが争われる。含まないなら、はっきり書くと、担当者どうしのやり取りで条件が変わることを防げる。
完全合意
理由契約前のやり取りで言われたことが、契約書にないのに後から持ち出される余地を狭める。英文の契約書で広く見られる条項。
権利の不行使
理由遅延や違反を黙認していたことが、権利の放棄だと主張されるのを避ける。
これらの条項は、英文の契約書では「一般条項」として、契約書の末尾にまとめて置かれます。条項そのものの意味は英文契約書のページで扱います。ここで確認したいのは、契約を結んだ後の運用との関係です。変更の方式を厳格にする契約書でも、現場で電子メールのやり取りで条件が変わり続けたのでは、契約書は意味を失います。署名者以外の担当者が結んだ約束の効力は、契約書の変更条項に従って判断される、ということを、現場の担当者にも共有しておく必要があります。
起きがちなこと:締結の入口で見落とされる点
起きがちなこと
- 署名欄の肩書だけを見て署名を受け取り、後から、署名者に代表権がなかったと相手が主張する。
- 相手が電子署名で署名したが、自社は紙の署名を求めていて、方式がそろわないまま手続が進み、どれが正式な契約書か分からなくなる。
- 一方が署名した契約書を送り、相手の署名が戻る前に、納品や作業を始めてしまう。契約の成立の時期と、先行した作業の扱いが決まっていない。
- 契約書の日付を署名日と効力発生日の両方の意味で使い、納期や支払期限の起算日が人によって違う。
- 通知の宛先が担当者個人のメールアドレスで、担当者が退職した後、解除の通知が届かなかったと主張される。
- 日本語版と英語版の両方に署名したが、優先する版の定めがなく、食い違いが見つかったときに解決できない。
- 契約後に、担当者が電子メールで価格の変更に合意したが、契約書の変更の方式には当たらず、どの条件が有効か分からなくなる。
よくあるご質問
海外の相手の署名者に権限があるか、どうやって確かめればよいですか?
署名欄の肩書だけでは足りません。会社の存在と代表者を示す公的な書類、または署名者に権限を授与した書面を、署名前に提出してもらう方法が一般的です。契約書の中でも、署名者が会社を代表して署名する権限をもつことを表明させ、保証させます。相手の国の会社法令に基づく権限の有無は、その国の法令によるため、本ガイドでは判断しません。
電子署名で結んだ契約書は、日本の裁判で証拠になりますか?
電子署名法3条は、本人による電子署名(本人だけが行うことができるもの)が行われた電磁的記録は、真正に成立したものと推定すると定めています。したがって、署名の方法が要件を満たす限り、日本の裁判所では、紙の文書への署名や押印があるときに文書の成立が推定される仕組み(民事訴訟法228条4項)と同様に、成立の推定が働きます。ただし、相手の国の裁判所や仲裁廷の扱いは、その国の法令や規則によります。
契約書の日付と、契約が成立する日は違いますか?
違うことがあります。日本法が適用される場面では、契約は申込みに対する承諾の意思表示が相手に到達した時に成立し(民法522条1項、97条1項)、契約書に書いた日付とは別です。そこで、契約書では、最後の署名の日を効力発生日と定義し、各自の署名日を併記する書き方がよく使われます。
通知は電子メールだけで足りますか?
契約書に電子メールによる通知を認める定めがあれば、電子メールでも通知できます。ただし、解除や損害賠償の請求のような重要な通知は、電子メールだけでなく、配達記録の残る方法も併用するよう定めておくと、届いたかどうかの争いを減らせます。通知の言語、宛先、到達したとみなす時点も、あわせて書いておきます。
日本語版と英語版の両方に署名してもよいですか?
署名すること自体はできます。ただし、両方に署名する場合は、二つの版のうちどちらが優先するかを、契約書の中で書いておく必要があります。署名する版を一つに絞り、もう一方は参考訳とする方法もあります。署名ページには、題名、言語、版数を記載して、別の版と取り違えないようにします。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容、相手の所在する国、契約の相手が事業者か消費者かによって異なることがあります。外国の法令や外国での手続の内容は、その国の法令と手続によるため、本ガイドでは判断しません。日本の法令の条文は e-Gov法令検索の現行の条文に沿って書いています。参考: e-Gov法令検索 / 外務省 / 経済産業省 / 日本貿易振興機構 / 税関